[チェックリスト付き]マネージドセキュリティのガイド
要約
この記事では、マネージドセキュリティサービスの選択、導入、運用における重要なポイントについて解説しています。サービスの検討、顧客と提供者の責任範囲の明確化、インシデント対応の方法、透明性の確保など、マネージドセキュリティサービスを効果的に活用するためのヒントが記載されています。
詳細分析
主なポイント
- マネージドセキュリティサービスの種類と検討ポイント
- 顧客と提供者の責任範囲の明確化
- インシデント対応時の情報共有と対応方法
- サービスの透明性と継続的な改善
社会的影響
- マネージドセキュリティサービスの利用は中小企業にとって重要
- サービスの選定や導入、運用ミスによる重大なセキュリティインシデントのリスク
- 顧客と提供者の信頼関係構築の重要性
編集長の意見
マネージドセキュリティサービスの導入と運用には多くの落とし穴があるため、サービスの機能や責任範囲、コミュニケーション方法などを事前に十分に検討し、継続的な改善を行うことが重要です。顧客とサービス提供者の信頼関係を築くことで、より効果的なセキュリティ対策を実現できるでしょう。特に専門家のいない中小企業や、大企業でも情シスが兼務しているようなところでは、重要なポイントが満載です。
ということで、本日は、セキュリティのマネージドサービスを導入検討、あるいは今導入しているがそのまま継続するか?を悩んでいる人向けにチェックリスト風にまとめてみました。
解説
マネージドセキュリティサービス(SOCサービス) を導入・継続の検討のために
今日は英国で公的機関でランサムウェアの身代金要求には応じないようにするといったことが検討されているというニュースがありました。
このような動きが波及すると、良い面もありますが、より民間企業への攻撃が多くなることも考えられます。
今日ははじめてSOCの導入を検討されている企業や、すでに導入しているがそろそろ年度も変わるので 継続を検討されている方向けに、チェックリストとして、どういうポイントを、今一度、整理して、俯瞰して見てみるのが良いか? という視点でチェックリストを作りました。
今回は、マネージドセキュリティサービス(SOCサービス)を選定する際に考慮すべき重要なポイントのチェックリストを作ってみました。 ポイントとしては、下記の10個のポイントを押さえてインタビューして見てください。
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サービスの適合性: 提供されるサービスが自社の環境に適しているか確認する。
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脅威モデルの反映: サービスが自社の脅威モデルを反映しているかどうかを評価する。
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カスタマイズの可能性: サービスが自社の特定のニーズに合わせてカスタマイズ可能かどうかを確認する。
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セキュリティの深さ: 提供されるセキュリティ対策の深さや多層性を評価する。
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コンプライアンスの遵守: 業界の規制やコンプライアンス要件に対する適合性を確認する。
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インシデント対応能力: インシデント発生時の対応能力やプロセスを評価する。
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レポーティングと可視性: セキュリティ状況のレポートや可視性の提供があるか確認する。
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サポート体制: サポートの質や対応時間を評価する。
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コストの透明性: サービスのコストが明確で、隠れた費用がないか確認する。
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顧客のフィードバック: 他の顧客からのフィードバックやレビューを参考にする。
といったポイントを元に、各チェック項目をまとめてみました。それぞれの項目で、理想的な状態とでも実際の現場でのことを考えて現実的な妥協点という形で考えて見ました。 実際の金額と、ビジネス的に考えて妥協点を見出していただければと思います。 あなたの企業にとって適切なマネージドセキュリティサービス(SOCサービス)を選定するための基盤、そして、社内のセキュリティルールを見直すベースを築くことができることを願って。
マネージドセキュリティサービス(SOCサービス)導入チェックリスト
1. 技術的な検出機能と制限の理解
EDRベースの検出機能
理想的な状態:
- 高度な脅威検出能力を持つEDRが導入され、エンドポイントでのリアルタイム検知と対応が可能
- 振る舞い検知やAI/MLベースの異常検知が実装されている
- 検知した脅威に対する自動対応機能が備わっている
チェックポイント:
- EDRソリューションの具体的な製品名と機能範囲
- リアルタイム検知の対応範囲(プロセス、ファイル、レジストリ等)
- 自動対応の範囲(隔離、ブロック、復元等)
- オフライン時の検知・対応能力
- エージェントの負荷状況とパフォーマンスへの影響
現実的な妥協点:
- すべての端末への一括導入が難しい場合は、重要度に応じた段階的な導入
- 一部の古いシステムやレガシーOSではエージェントレスの監視に切り替える
- 自動対応は慎重に検討し、初期は手動確認付きで開始
カスタム検出ルール
理想的な状態:
- 業界特有の脅威に対応したカスタムルールの作成が可能
- ビジネスロジックに基づいた異常検知ルールの実装
- サードパーティ製品との連携による複合的な検知
チェックポイント:
- カスタムルール作成のための言語やフレームワーク
- ルール作成に必要な技術スキルと教育支援
- テスト環境でのルール検証プロセス
- ルールの更新・メンテナンスプロセス
- パフォーマンスへの影響評価方法
現実的な妥協点:
- 初期は既存のルールテンプレートをベースにカスタマイズ
- 重要度の高い検知シナリオから段階的に実装
- 複雑なルールは外部コンサルタントの支援を受ける
ログソース管理
理想的な状態:
- すべての重要システムからのログが収集可能
- リアルタイムなログ転送と解析
- 長期保存と高速な検索が可能
チェックポイント:
- 対応可能なログフォーマットの種類
- ログ収集の頻度とリアルタイム性
- 保存期間とストレージコスト
- ログの正規化と相関分析能力
- クラウドサービスからのログ収集対応
現実的な妥協点:
- 重要度に応じたログ保存期間の設定
- 一部のログは要約データのみ長期保存
- バッチ処理による定期的なログ転送の活用
2. 環境適合性の評価
脅威モデルとの整合性
理想的な状態:
- 組織固有の脅威シナリオがすべてカバーされている
- 業界特有の攻撃手法に対する対策が実装
- 新しい脅威への迅速な対応体制が整備
チェックポイント:
- 想定される攻撃シナリオのカバー率
- 業界特有の脅威への対応状況
- 新しい脅威への更新プロセス
- インシデント対応手順の整備状況
- 訓練・演習の実施計画
現実的な妥協点:
- 優先度の高い脅威から段階的に対策を実装
- 一般的な脅威対策を基本として、特殊な脅威は個別に検討
- 定期的な見直しと更新の計画を立てる
インフラストラクチャカバレッジ
理想的な状態:
- すべてのシステムとネットワークが監視対象
- クラウドとオンプレミスの統合的な管理
- セグメント間の相関分析が可能
チェックポイント:
- 監視対象システムの一覧と優先度
- ネットワークセグメントごとの監視方式
- クラウドサービスの監視範囲
- 監視の死角となる領域の特定
- 将来の拡張性への対応
現実的な妥協点:
- 重要システムを優先した段階的な導入
- 一部システムは簡易的な監視に留める
- コスト効率を考慮した監視レベルの調整
3. コミュニケーション体制
アラート管理
理想的な状態:
- 重要度に応じた適切な通知経路の確立
- フォールスポジティブの最小化
- インシデントの自動分類と振り分け
チェックポイント:
- アラートの重要度定義と基準
- 通知方法と連絡先の設定
- エスカレーションルールの明確化
- 休日・夜間の対応体制
- フォールスポジティブの管理プロセス
現実的な妥協点:
- 重要度の高いアラートに集中した初期運用
- 段階的なチューニングによる精度向上
- 運用負荷を考慮した通知ルールの最適化
レポーティング
理想的な状態:
- リアルタイムなダッシュボード提供
- 経営層向けサマリーの自動生成
- トレンド分析と予測情報の提供
チェックポイント:
- レポートの種類と提供頻度
- カスタムレポートの作成可否
- データの可視化方法
- レポートの保存期間
- セキュリティ指標(KPI)の設定
現実的な妥協点:
- 標準レポートテンプレートの活用
- 重要な指標に絞った定期報告
- 詳細データは要求ベースで提供
4. インシデント対応プロセス
初動対応
理想的な状態:
- 24/7の監視と即時対応
- 自動化された初期対応手順
- エスカレーション基準の明確化
チェックポイント:
- 初動対応の所要時間目標
- 自動対応の範囲と権限
- 手動対応が必要な条件
- エスカレーション基準と手順
- 証拠保全プロセス
現実的な妥協点:
- 業務時間内の即時対応と時間外の基本対応
- 重要度に応じた対応時間の設定
- 自動対応の段階的な拡大
フォレンジック対応
理想的な状態:
- 高度な分析能力の提供
- 法的証拠としての保全対応
- 詳細な原因究明と報告
チェックポイント:
- フォレンジック調査の範囲
- 証拠保全の方法と期間
- 分析ツールと技術力
- 報告書の作成基準
- 外部専門家との連携体制
現実的な妥協点:
- 重大インシデントのみ詳細調査を実施
- 基本的な分析は内製、高度な分析は外部委託
- コストを考慮した調査範囲の設定
5. 透明性とドキュメント管理
文書化基準
理想的な状態:
- 標準化された文書体系の確立
- リアルタイムな更新と版管理
- わかりやすい技術文書の提供
チェックポイント:
- 文書体系の整備状況
- 更新プロセスの明確化
- アクセス権限の管理
- 文書フォーマットの標準化
- 多言語対応の必要性
現実的な妥協点:
- 重要文書から段階的な整備
- テンプレートを活用した効率化
- 必要最小限の文書から開始
知識管理
理想的な状態:
- ナレッジベースの整備と共有
- ベストプラクティスの蓄積
- 継続的な改善プロセス
チェックポイント:
- 知識共有の仕組み
- 教育訓練プログラム
- 技術情報の更新頻度
- フィードバックの反映方法
- 社内教育との連携
現実的な妥協点:
- 基本的な情報から段階的に整備
- 既存の管理ツールの活用
- 定期的な見直しと更新
6. 実装プロセス管理
プロジェクト管理
理想的な状態:
- 明確なマイルストーンの設定
- リスクの事前識別と対策
- 円滑なステークホルダー管理
チェックポイント:
- プロジェクト計画の詳細度
- リスク管理方法
- 進捗報告の頻度
- 品質管理基準
- 受入テスト基準
現実的な妥協点:
- フェーズ分けによる段階的な導入
- 優先度に基づく機能の取捨選択
- 柔軟なスケジュール調整
運用移行
理想的な状態:
- スムーズな移行プロセス
- 既存システムとの整合性確保
- 運用手順の確立と教育
チェックポイント:
- 移行計画の具体性
- 並行運用期間の設定
- 教育訓練の計画
- 問題発生時の対応手順
- 運用評価基準
現実的な妥協点:
- 段階的な移行による負荷分散
- 重要システムを優先した移行
- 必要最小限の並行運用期間
7. 継続的改善プロセス
定期評価
理想的な状態:
- 定量的な評価指標の設定
- 定期的なサービスレビュー
- 改善提案の実施
チェックポイント:
- 評価指標の設定状況
- レビュー会議の頻度
- 改善提案の仕組み
- フィードバックの反映方法
- ベンチマーク比較
現実的な妥協点:
- 重要な指標に絞った評価
- 四半期ごとの定期レビュー
- 実現可能な改善から着手
最新技術対応
理想的な状態:
- 新技術の積極的な評価と導入
- 脅威情報の継続的な更新
- 先進的な対策の実装
チェックポイント:
- 技術動向の把握方法
- 評価環境の整備
- 導入判断基準
- コスト対効果の分析
- 既存システムとの整合性
現実的な妥協点:
- 実績のある技術の優先導入
- 段階的な技術更新
- 費用対効果を考慮した選択
このチェックリストは、各組織の規模や業態に応じて適宜カスタマイズしていただくことを前提としています。すべての項目を完璧に満たすことは現実的ではありませんが、これらの項目を意識しながら、自組織に最適なバランスを見つけることが重要です。 ぜひ、利用して見てください。
背景情報
- Compass Securityが顧客とのパープルチームの経験から得た知見を基に執筆
- マネージドセキュリティサービスの定義や提供モデルが曖昧なため、顧客と提供者の認識のズレが発生しやすい
- サービスの導入や運用における技術的な課題や落とし穴について解説