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2025-01-24

トランプ政権下のCISA: 偽情報対策の縮小と政治的対立

要約

トランプ政権は、CISAの役割と予算について根本的な見直しを検討しており、特に偽情報(ディスインフォメーション)対策に関して、大きな転換点を迎えようとしています。

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詳細分析

主なポイント

  • 民主党はこの予算配分に懸念を示している
  • 民主党は、偽情報対策以外のサイバーセキュリティ対策が後手に回るのではないかと危惧している

社会的影響

  • サイバーセキュリティ対策の重点が偽情報対策に偏ることで、他の重要な対策が後手に回る可能性がある
  • 偽情報対策の強化は民主主義にとって重要だが、バランスが取れていないと問題が生じる
  • サイバーセキュリティ全般の対策が後手に回れば、国家の重要インフラやシステムが狙われるリスクが高まる

編集長の意見

サイバーセキュリティ対策には様々な側面があり、適切なバランスが必要不可欠だと考えます。CISAの予算配分は慎重に検討されるべきで、国家安全保障の観点から考えると、今、縮小すべきではなく、サイバーセキュリティ全般の強化につながるよう、専門家の意見を十分に反映させるべきだと思います。
本日は今回の政治的対立について詳細に解説します。

解説

トランプ政権下のCISA: 誤情報対策の縮小と政治的対立

はじめに

2025年1月、アメリカの政治情勢に新たな変化が訪れています。トランプ大統領が再び大統領に就任し、サイバーセキュリティとインフラセキュリティ庁(CISA)の将来に大きな影響を与えようとしています。トランプ政権は、CISAの役割と予算について根本的な見直しを検討しており、特に虚偽情報(ディスインフォメーション)対策に関して、大きな転換点を迎えようとしています。

これまでCISAは、COVID-19パンデミックや2020年大統領選挙において、ソーシャルメディアプラットフォームと協力し、外国の敵対勢力や国内の情報源からの誤情報や偽情報に対処してきました。
しかし、トランプ政権下で、特にクリスティ・ノエム国土安全保障省(DHS)長官候補は、CISAをより小さく、機敏な組織にし、誤情報モニタリングの取り組みを縮小すべきだと主張しています。

内容について

政治的な対立の中心にあるのは、CISAの虚偽情報対策の役割です。
共和党は、この機関が過去2年間、保守的な声を標的にしてきたと主張しており、民主党はこの主張を強く否定しています。
下院国土安全保障委員会の公聴会では、この対立が鮮明に表れました。

ノエム氏は、CISAがソーシャルメディアプラットフォーム上の誤情報を指摘する活動を停止すべきだと主張しています。
提案としては、機関の予算と人員を削減し、その焦点を連邦機関内の脅威の追跡に絞ることを目指しています。
一方、ベニー・トンプソン下院議員を筆頭とする民主党議員は、このような削減に強く反対しています。

興味深いのは、CISAの誤情報対策予算が全体予算の1%未満、約200万ドルであることです。
元CISA幹部のブランドン・ウェールズ氏は、この取り組みがアメリカ人を検閲したという共和党の主張を明確に否定しました。

さらに、トランプ政権の予算削減の動きは、国土安全保障省全体に広がっています。
中国によるハッキング事件を調査していたサイバーセキュリティ諮問委員会を含む、複数の諮問委員会が解散させられました。
国土安全保障省の高官は、「大統領の議題や米国市民の憲法上の権利を損なおうとする議題を押し進める諮問委員会は容認しない」と述べています。

この状況は、サイバーセキュリティと政治的イデオロギーの複雑な交差点を示しています。
共和党のアンドリュー・ガルバリーノ下院議員は、サイバーセキュリティの重要性を認めつつ、ノエム氏の立場を支持しています。

深掘りすると?

トランプ大統領がCISAの虚偽情報対策予算を完全に削減するつもりかどうかは、まだ明確ではありません。
しかし、この記事が示唆しているのは、政権が機関の役割を大幅に縮小し、その焦点を変更しようとしていることです。

サイバーセキュリティは国家安全保障の重要な側面であり、これまでCISAは超党派の支持を得てきました。
しかし、現在の政治的な分断は、この重要な機関の将来に大きな疑問を投げかけています。
誤情報対策は、民主主義のプロセスを守る上で重要な役割を果たしますが、同時に表現の自由と政治的中立性のバランスを保つことも同様に重要です。

トランプ政権のこの動きは、サイバーセキュリティと情報の信頼性に関する今後の議論に重要な影響を与えるでしょう。
CISAがどのように進化し、その役割をどのように再定義するかは、アメリカの民主主義と国家安全保障の将来にとって重要な意味を持つことになります。

このような削減が行われると、どのようなことが起こりうるのか?

  1. 誤情報への対応能力低下
  • ソーシャルメディア上の有害な情報に対する監視が弱まる
  • 外国の敵対勢力による情報操作リスクが高まる
  1. 政治的影響
  • 特定のイデオロギー的視点からの情報フィルタリングが進む
  • 情報の中立性や信頼性の低下
  1. サイバーセキュリティへの影響
  • 国家安全保障上のリスクが増大する可能性
  • 重要な情報インフラ保護の観点からの課題

などが考えられます。いまの地政学的な、偽情報戦争を考えると、この政策は非常に危ういものだと考えます。 つい昨年末には、通信事業者が中国に攻められていたり、国家の重要なインフラへの侵入が懸念されていたのにです。

なのになぜ、このような提案がされたのかを紐解くと、

  1. 政治的主張
  • 共和党は、CISAの誤情報対策が保守的な声を標的にしていると主張
  • 2020年の選挙や新型コロナワクチンに関する情報において、保守的な意見が抑制されたと考えている
  1. 法的背景
  • 2023年7月のミズーリ州発の訴訟で、バイデン政権の誤情報対策が修正第1条(表現の自由)に違反する可能性が指摘された
  • 最高裁は最終的にバイデン政権の立場を支持したものの、この訴訟が影響を与えた

といったものが考えられます。

ところで、この、「2023年7月のミズーリ州発の訴訟」とは?

この訴訟は、バイデン政権のCISAと他の連邦機関が、ソーシャルメディア企業に特定の情報を「誤情報」として報告し、削除や制限するよう働きかけたことが、表現の自由を侵害しているとする訴訟でした。

主な論点は:

  • COVID-19ワクチンに関する批判的な意見
  • 2020年大統領選挙の不正主張
  • トランプ前大統領の発言

これらの情報について、政府機関が直接的または間接的にソーシャルメディア企業に削除や抑制を要請することが、憲法で保護されている表現の自由を侵害しているとする主張でした。

最高裁は最終的にバイデン政権の立場を支持しましたが、この訴訟自体が政府の情報管理アプローチに対する重大な挑戦となり、CISAの誤情報対策の将来に影響を与えました。

つまり

前政権時に、やられたからやり返す的な思惑しか見えないのですが、、
このような政治的なメンツのやり取りで縮小されることで、国民への危険も増えることがわからないのでしょうか?
結局我々のような一般の人々は、こういう政治家の思惑だけで、危険に晒されるようなこともあるというのが、「いま」なのでしょう。
今回の対立構造を、図にまとめてみました。

背景情報

  • CISAは2018年に設立された連邦政府のサイバーセキュリティ機関
  • 民主党は、サイバーセキュリティ全般の対策が後手に回ることを懸念している