2025-12-17

ロシアのGRUハッカーは脆弱性よりも設定ミスを好む

Amazonの脅威インテリジェンスによると、ロシアのGRU(主権情報局)に関連するハッカーは、ソフトウェアの脆弱性を悪用するのではなく、設定ミスを利用して重要インフラに侵入する傾向が強まっています。この活動は2021年から続いており、特にエネルギー供給者や重要インフラの組織をターゲットにしています。攻撃者は、管理インターフェースが露出しているか、適切に保護されていないネットワークエッジデバイスに焦点を当てています。Amazonは、顧客の設定ミスが原因であり、AWSインフラの弱点ではないとしています。

メトリクス

このニュースのスケール度合い

7.0 /10

インパクト

7.5 /10

予想外またはユニーク度

6.5 /10

脅威に備える準備が必要な期間が時間的にどれだけ近いか

7.0 /10

このニュースで行動が起きる/起こすべき度合い

7.5 /10

主なポイント

  • ロシアのGRUハッカーは、設定ミスを利用して重要インフラに侵入しています。
  • 攻撃者は、エネルギーセクターを中心に活動しており、顧客の設定ミスが原因とされています。

社会的影響

  • ! このような攻撃は、重要インフラの安全性に対する脅威を高めており、社会全体に影響を及ぼす可能性があります。
  • ! 特にエネルギーセクターへの攻撃は、国民生活に直接的な影響を与えるため、警戒が必要です。

編集長の意見

最近のAmazonの報告は、サイバーセキュリティの現状を反映しており、特に設定ミスがもたらすリスクに対する警鐘を鳴らしています。GRUに関連するハッカーが、従来の脆弱性を利用するのではなく、設定ミスを狙うようになったことは、攻撃手法の進化を示しています。これにより、企業はより一層の注意を払う必要があります。特に、ネットワークエッジデバイスの管理が不十分であると、攻撃者にとって格好の標的となります。専門家は、企業に対して定期的な監査を行い、管理インターフェースを適切に保護することを強く推奨しています。また、認証情報の再利用を防ぐために、異常な管理アクセスを監視することも重要です。今後、サイバー攻撃はますます巧妙化することが予想されるため、基本的なセキュリティ対策を徹底することが求められます。特に、AWS環境においては、セキュリティグループのアクセス制限や管理インターフェースの隔離、ログの有効化と脅威検出サービスの導入が必要です。これらの対策を講じることで、企業はサイバー攻撃に対する防御力を高めることができるでしょう。

解説

GRU系はゼロデイより「設定不備」を突く——管理面の露出がインフラの最大の割れ目です

今日の深掘りポイント

  • 国家系オペレーターが「脆弱性」よりも「設定不備(Misconfiguration)」を初期侵入の主軸に据える動きが報告されています。ゼロデイ偏重の思い込みを捨て、晒された管理面の極小ギャップを埋めるほうが、現実のリスク低減に直結します。
  • 標的はエネルギーを含む重要インフラとされ、ネットワークエッジデバイスやクラウド管理インターフェースの露出・過剰権限・MFA不備など「運用由来の欠陥」が狙われます。攻撃コストが低く秘匿性も高いため、攻撃側の経済合理性が働いています。
  • メトリクス全体から、独自性より即応性と実務の行動可能性が高い材料と読み取れます。発見・遮断は「ゼロトラスト的な管理面の隔離」「クラウドAPI監査の常時可視化」「ASMでの外部露出ゼロ化」が鍵です。

はじめに

Amazonの脅威インテリジェンスは、ロシアのロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)関連アクターが、ソフトウェア脆弱性よりも「設定ミス」を梃子に重要インフラへ侵入する傾向を強めていると指摘しています。報道では、露出した管理インターフェースや保護が不十分なネットワークエッジ機器が焦点で、AWSの基盤脆弱性ではなく顧客側の設定不備である点が強調されています。この動きは2021年以降の活動の延長線上にあり、2025年にかけて攻撃者の選好が「低コスト・低ノイズな初期侵入」へシフトしている構図が見えます。

参考: Hackreadの報道(Amazonの脅威インテリジェンスの指摘を紹介)https://hackread.com/amazon-russia-gru-hackers-misconfigured-vulnerabilities/

本稿では、報じられた「設定不備重視」という傾向を素材に、攻撃面の経済性、クラウドおよびOT境界の実務的ギャップ、そしてMITRE ATT&CKに整合した脅威シナリオを掘り下げます。

深掘り詳細

事実整理(報道ベース)

  • GRU関連アクターが、ゼロデイや既知CVEの悪用以上に「設定不備」を初期侵入で多用していると報じられています。対象はエネルギー供給者など重要インフラが中心で、露出した管理インターフェースや保護不備のネットワークエッジ機器が優先的に狙われます。AWS側は自社基盤の欠陥ではなく顧客の設定不備である点を明確化しています。
  • 2021〜2024年に観測された脆弱性悪用の継続に加え、2025年は設定不備の活用に重心が移動したと整理されています。これが事実だとすれば、攻撃側がより静的かつ横展開可能な「運用の穴」を系統的に狙っていることを意味します。
  • 設定不備の典型例としては、以下が想定されます(一般論としての整理です)。
    • インターネットに露出した管理インターフェース(VPN/SD-WAN/ファイアウォールのリモート管理、クラウド管理コンソール、仮想アプライアンスのWeb UI)
    • 過剰に開放されたクラウドセキュリティグループ/ACL、MFA未適用、デフォルト/再利用パスワード、監査ログ無効化
    • ネットワークエッジ機器でのWAN側管理有効化、アクセス制御の不備、認証連携の脆弱な実装

出典: Hackreadの記事(Amazonによる指摘の二次報道)https://hackread.com/amazon-russia-gru-hackers-misconfigured-vulnerabilities/

インサイト(編集部の見立て)

  • 攻撃経済性の観点では、設定不備は「調達コストが低い」「検知を回避しやすい」「再現性が高い」という三拍子が揃います。ゼロデイは高価・希少で運用負荷も高いのに対し、設定不備はShodan/ASMやクラウドAPIの監査抜けを突くことで横展開が容易です。国家系であっても、作戦規模の拡大には低コスト手段が合理的です。
  • 重要インフラの現場では、OT/ICSとIT/クラウドの境界に「管理面の集中」が発生します。ここにこそ「露出・過剰権限・可視化不足」の三重苦が生まれがちです。特に、運用保守の利便性からWAN側管理を許容したり、クラウドの踏み台からOTへ入る管理経路を恒常的に開けたりする設計は、攻撃者にとって最短距離のエントリになります。
  • メトリクスの示唆としては、新奇性よりも「いま動ける」実務性が勝ります。すなわち、技術的な新攻撃の研究よりも、ASM/クラウド監査で露出を即日ゼロ化する施策が投資対効果を最大化します。確率・信頼性の評価も高く、ボード説明では「ゼロデイ対策の追加投資より、設定監査の継続的自動化が先行」と位置付けるのが合理的です。

脅威シナリオと影響

以下は報道と一般的TTPに基づく仮説シナリオです。具体のキャンペーン固有TTPはオープンソースの一次資料に依拠する必要がありますが、ここではMITRE ATT&CKに沿って想定を提示します。

  • シナリオA:クラウド管理面からの初期侵入と境界横断

    1. 初期侵入: 外部公開のクラウド管理面に対し、パスワードスプレー/認証情報再利用やMFA不備を突く
      • ATT&CK: Valid Accounts (T1078, とりわけ T1078.004 Cloud Accounts), External Remote Services (T1133), Brute Force/Password Spraying (T1110/T1110.003)
    2. 発見・権限昇格: クラウドAPIでアカウント・ネットワーク・ログ状況を探索し、ロール引き受け等で権限拡大
      • ATT&CK: Cloud Service Discovery (T1526), Valid Accounts (T1078), Modify Cloud Compute Infrastructure (T1578)
    3. 横移動: クラウド踏み台からオンプレ/OT管理ネットへ到達する経路を利用
      • ATT&CK: Remote Services (T1021), VPN/Jump Hostの悪用(一般化)
    4. 目的遂行: データ窃取、設定改変、場合により業務停止の準備
      • ATT&CK: Exfiltration Over Web Services (T1567), Inhibit System Recovery (T1490), Data Encrypted for Impact (T1486)
  • シナリオB:ネットワークエッジ機器のWAN側管理露出を突く

    1. 初期侵入: SD-WAN/ファイアウォール/ルータの管理面がWAN側で開放、あるいは既定/弱い資格情報
      • ATT&CK: External Remote Services (T1133), Valid Accounts (T1078), Brute Force (T1110)
    2. 持続化: 設定に隠し管理ユーザーやACL例外を埋め込み、ログ送信先を改変
      • ATT&CK: Modify Cloud/Network Infrastructure (T1578の文脈で一般化), Impair Defenses (T1562)
    3. 横移動: サイト間トンネルや管理VLANからサーバ/OTへ横移動
      • ATT&CK: Remote Services (T1021), Lateral Tool Transfer (T1570)
    4. 影響: トラフィックミラー/中間者、セグメントの遮断、監視の盲目化
      • ATT&CK: Exfiltration (T1567), Network DoS/Service Stop (T1489の文脈)
  • 影響評価(一般論)

    • 運用面: 監視の盲点から長期潜伏されると、検知は構成差分監査に依存しがちになります。ログ無効化や出力先改変で「見えなくされる」リスクが高いです。
    • 事業面: エネルギーや運輸などの越境影響は連鎖的で、一次停止が下流の多業種に波及します。国家関与の疑いは意思決定(公表・報告・対外調整)を複雑化させます。
    • レピュテーション/規制面: 「ゼロデイではなく設定不備」が原因だと説明責任が重く、監督当局・保険・株主対応の難易度が上がります。

参考(MITRE ATT&CKテクニックの定義):

  • Valid Accounts (T1078): https://attack.mitre.org/techniques/T1078/
  • External Remote Services (T1133): https://attack.mitre.org/techniques/T1133/
  • Brute Force (T1110): https://attack.mitre.org/techniques/T1110/
  • Cloud Service Discovery (T1526): https://attack.mitre.org/techniques/T1526/
  • Remote Services (T1021): https://attack.mitre.org/techniques/T1021/
  • Modify Cloud Compute Infrastructure (T1578): https://attack.mitre.org/techniques/T1578/

セキュリティ担当者のアクション

優先度と即効性が高い順に、具体策を提示します。クラウドはAWS例を中心に記載しますが、他クラウドにも一般化できます。

  • 露出のゼロ化(Attack Surface Management/ASMの即時運用)

    • インターネットに露出した管理面(VPN/SD-WAN/ファイアウォール/仮想アプライアンス/クラウド管理コンソール)を全網で棚卸しし、原則WAN側無効化またはゼロトラスト・ブローカー経由へ集約します。
    • ASMで「管理ポート開放」「既定クレデンシャル」「TLS/認証の弱設定」「過剰に開放されたクラウドSG/ACL」を継続スキャンし、発見=即時インシデント扱いにします。
  • 管理面の隔離とJIT化

    • 管理面は専用ネット(VRF/VPC/専用踏み台)に隔離し、管理アクセスはJIT(Just-In-Time)で必要時のみ短時間開放します。恒常的な0.0.0.0/0開放は運用禁止にします。
    • クラウドのOS管理はできる限りエージェント式に置換し、SSH/RDPは閉じます(AWSならSystems Manager Session Managerの利用)AWS SSM Session Manager
  • 認証強化と特権管理

    • すべての管理面にフィッシング耐性の高いMFA(FIDO2/WebAuthn)を適用し、TOTPメール/SMSはやむを得ない場合の暫定とします。
    • 管理者は用途分離した個人特権IDを必須化、Cloud/Domain/Localの認証情報再利用を禁止します。緊急用(Break-glass)資格情報はハード保管+定期演習で検証します。
  • クラウドAPIの常時監査・検知

    • CloudTrail/Config/GuardDuty/Detective等の基盤監査と脅威検出を有効化し、管理面の異常(MFAなしログイン、SG開放、ルート使用、ログ設定変更)を即アラートにします。
      • CloudTrail: https://docs.aws.amazon.com/awscloudtrail/latest/userguide/cloudtrail-user-guide.html
      • AWS Config: https://docs.aws.amazon.com/config/latest/developerguide/WhatIsConfig.html
      • GuardDuty: https://docs.aws.amazon.com/guardduty/latest/ug/what-is-guardduty.html
    • 推奨アラート例(CloudTrail/監査ログでの検出設計):
      • ConsoleLoginでMFA未使用、異常AS/ASN・新規地理からの成功
      • AuthorizeSecurityGroupIngress/Egressで管理ポート(22/3389/443管理UI等)を0.0.0.0/0に変更
      • StopLogging/DeleteTrail/PutBucketPublicAccessBlockの無効化等「検知潰し」の試行
      • AssumeRoleの横展開異常(時間帯・端末指紋・地理の逸脱)
  • ネットワークエッジの堅牢化

    • WAN側管理は無効化が原則です。やむを得ず有効化する場合は、特定ソースIP+二要素+アプリ層プロキシを併用し、装置側に直接触れない設計にします。
    • すべての構成変更を集中ログ(syslog/TACACS+)へ送信し、日次で「差分レビュー」を自動化します。ログ出力先改変の監視(整合性監査)を別系統で行います。
  • 監視とハンティングの着眼点

    • パスワードスプレー兆候(多数ユーザにわたる低頻度失敗)と、成功後の「静かなクラウド探索」(列挙API連打)の組合せを相関で炙り出します。
    • 管理系踏み台からOT/産業ネットへの新規通信、既存トンネルのトラフィック特性変化(帯域/時間帯/宛先ASN)をベースライン比較で検知します。
  • 運用ガバナンス

    • 「管理面露出ゼロ」をSLO化し、逸脱はプロダクション変更と同格のCAB承認を必須にします。外部公開は期限付き例外として自動失効(JIT)にします。
    • ベンダ保守経路はゼロトラストブローカー経由に統一し、共有アカウント・固定VPNを廃止します。契約上もMFA・ログ保全・侵害通報を義務化します。
  • IR準備(設定不備前提の初動)

    • 資格情報流出/悪用を前提に、強制ログアウト・鍵/証明書ローテーション・ロール信頼関係の見直し・監査/アラート強制再有効化のランブックを整備し、四半期ごとに演習します。

最後に、今回の材料は「新奇なマルウェア」より「平凡な穴を量産的に突く」脅威にスポットを当てています。ゼロデイ対策の強化は当然としても、実被害を防ぐ第一歩は「管理面を閉じる」「権限を絞る」「見える化する」という運用基本の徹底です。国家系であっても、そこは変わらない現実です。

参考情報

  • Hackread: AmazonによるGRU関連の設定不備悪用の指摘報道 https://hackread.com/amazon-russia-gru-hackers-misconfigured-vulnerabilities/
  • MITRE ATT&CK(テクニック定義)Valid Accounts (T1078) https://attack.mitre.org/techniques/T1078/
  • MITRE ATT&CK(テクニック定義)External Remote Services (T1133) https://attack.mitre.org/techniques/T1133/
  • AWS Systems Manager Session Manager(管理の脱SSH/RDP)https://docs.aws.amazon.com/systems-manager/latest/userguide/session-manager.html
  • AWS CloudTrail(API監査)https://docs.aws.amazon.com/awscloudtrail/latest/userguide/cloudtrail-user-guide.html
  • AWS Config(設定準拠監査)https://docs.aws.amazon.com/config/latest/developerguide/WhatIsConfig.html
  • Amazon GuardDuty(脅威検出)https://docs.aws.amazon.com/guardduty/latest/ug/what-is-guardduty.html

注記: 本稿は公開情報の報道を基にした編集部の分析であり、具体的キャンペーンのTTPは一次情報の精査が必要です。仮説はその旨を明示して提示しています。

背景情報

  • i GRUはロシアの主権情報局であり、国家のサイバー攻撃を行う組織です。最近の研究によると、彼らはソフトウェアの脆弱性を利用するのではなく、設定ミスを悪用していることが明らかになりました。これにより、攻撃者はより低リスクでアクセスを得ることが可能となっています。
  • i Amazonの報告によると、攻撃者は特にエネルギー供給者や重要インフラの組織をターゲットにしており、管理インターフェースが不適切に設定されたネットワークデバイスを狙っています。これにより、攻撃者はユーザーの認証情報を収集し、他のオンラインサービスに再利用することが可能になります。