2026-01-19

英国陸軍がサイバー連隊の常設基地に2億7900万ポンドを投資

英国陸軍は、サイバー連隊の常設基地に2億7900万ポンドを投資することを発表しました。この計画は、陸軍ネットワークの防御とサイバー作戦を支援する13信号連隊に焦点を当てています。新しい施設は、サイバー訓練、作戦、情報作業を支援し、サイバー情報およびセキュリティ作戦センターも設置されます。建設は2027年に開始され、2030年に完成予定です。これにより、92の雇用が創出され、地域産業の支援にもつながるとされています。

メトリクス

このニュースのスケール度合い

7.0 /10

インパクト

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予想外またはユニーク度

6.0 /10

脅威に備える準備が必要な期間が時間的にどれだけ近いか

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このニュースで行動が起きる/起こすべき度合い

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主なポイント

  • 英国陸軍は、サイバー連隊の常設基地に2億7900万ポンドを投資することを発表しました。
  • 新しい基地は、サイバー訓練や作戦を支援するための施設を提供します。

社会的影響

  • ! この投資は、地域経済の活性化に寄与し、地元産業の支援にもつながると期待されています。
  • ! 新しい施設は、陸軍の人員がより良い環境で訓練や生活を行えるようにすることを目的としています。

編集長の意見

このプロジェクトは、英国陸軍のサイバー能力を強化するための重要なステップです。サイバー攻撃が増加する中で、陸軍が持つネットワークの防御力を高めることは、国家の安全保障にとって不可欠です。新しい基地は、サイバー訓練や作戦を支援するための最新の施設を提供し、陸軍の人員が必要なスキルを習得するための環境を整えます。また、地域経済への影響も大きく、雇用創出や地元産業の支援が期待されます。今後の課題としては、サイバー攻撃の手法が進化する中で、陸軍がどのようにしてその脅威に対処していくかが挙げられます。持続的な投資と技術の更新が求められるでしょう。さらに、サイバーセキュリティの専門家を育成するための教育プログラムの充実も重要です。これにより、陸軍は未来の脅威に対しても柔軟に対応できる体制を整えることができるでしょう。

解説

英陸軍が「サイバーの常設拠点」に2.79億ポンドを投資——訓練・作戦・情報を一体化する“運用の場”が抑止力を底上げします

今日の深掘りポイント

  • 13信号連隊の恒久施設整備は、サイバー訓練・作戦・インテリジェンスを一体運用するための「基盤アーキテクチャ」づくりに資する一手です。
  • 建設は2027年開始、2030年完成予定という中期計画で、即効性よりも制度化と持続性を狙う投資です。
  • 新設の「サイバー情報およびセキュリティ作戦センター」によって、CTIからSOCまでの意思決定ループ短縮が期待できます。
  • 施設整備は同時に、建設・設備・ITの長尺サプライチェーンを生みます。供給網を狙ったプレポジショニング攻撃への備えが最重要になります。
  • 日本のCISOやSOCにとっては、拠点整備=“建つ前から守る”を実践する好機で、設計段階のゼロトラストと建物設備(BMS/OT)の分離・監査が鍵になります。

はじめに

英国陸軍がサイバー連隊の恒久拠点整備に2億7900万ポンドを投じると発表しました。対象は陸軍ネットワークの防御とサイバー作戦を担う13信号連隊で、サイバー訓練・作戦・情報任務を支える施設に加え、「サイバー情報およびセキュリティ作戦センター」が設置されます。建設は2027年開始、2030年完成予定で、雇用創出や見習い枠の提供も見込まれます。サイバー領域を“臨時対応”から“常設運用”へと引き上げる構えであり、同盟国の抑止力にも静かな圧力を与える布石になります。

本件は確度・信頼性が高く、実行も現実的でありながら、波及は中期的で制度化による持続的効果が主眼に見える案件です。単なるIT増強ではなく、「人・プロセス・設備」を束ねる運用拠点という点に価値があります。

参考情報: Help Net Securityの報道

深掘り詳細

事実関係(確認できること)

  • 英国陸軍がサイバー連隊(13信号連隊)の恒久拠点整備に2億7900万ポンドを投資する計画です。
  • 施設にはサイバー訓練・作戦・情報業務を支援する機能が含まれ、「サイバー情報およびセキュリティ作戦センター」が併設されます。
  • 建設は2027年開始、2030年完成予定で、雇用92名創出、見習い枠32名の提供が見込まれます。
  • 本件は陸軍ネットワークの防御力を高め、作戦支援能力を拡充する狙いです。
  • 以上は、現時点で公表された内容に基づく事実です。

出典: Help Net Security

インサイト(何が変わるか)

  • 訓練・作戦・インテリジェンスの同居がもたらす“短ループ化”です。CTIが示す観測と、SOCの検知・封じ込め、演習場(レンジ)での再現・検証が地理的にも組織的にも近づくことで、TTPの学習と配備が非連続に早くなります。これは“ツールの刷新”よりも“OODAの高速化”という運用価値に直結します。
  • サイバーは“人材×環境”の学習曲線が支配的です。恒久拠点は、隊員の定常的な訓練サイクル、教範の改善、装備の持続的評価を可能にし、即応よりも“熟成”に効きます。見習い枠の組み込みは、内部育成と現場インターンのハイブリッド育成を想起させます。
  • 中期建設はサプライチェーンを長く太くします。設計・建築・設備・IT・運用立上げの全段で、攻撃者は“完成前の裏口”を狙えます。拠点の価値が上がるほど、建設段階のBMSや施工業者のアカウント、ベンダーの遠隔保守経路が狙われやすくなります。
  • 同盟・多国間演習への波及は大きいです。常設拠点は対外訓練の受け皿にもなり、相互運用の“共通レンジ・共通手順”が育ちます。これが抑止力や共同のインシデント対応を底上げします。

なお、13信号連隊の既存任務や他機関との具体的連接は今後の公表に依存します。国家間の組織連携(例: インテリジェンス機関やサイバー部隊との役割分担)の詳細は現時点では推測の域を出ないため、断定は避けます。

脅威シナリオと影響

恒久拠点の建設と運用は、新たな“狙われどころ”を生みます。完成後のSOCや訓練環境はもちろん、完成前の設計・施工・試運転の全段階が攻撃面(アタックサーフェス)になります。以下は仮説に基づくシナリオで、MITRE ATT&CKの観点を付しています。

  • 建設段階の供給網侵入(サプライチェーン・プレポジショニング)です。

    • 仮説: 施工関連のベンダーやITインテグレーターへの侵入から、当該拠点のBMSや監視システムへのアクセスを獲得します。
    • 典型的技術: Supply Chain Compromise(T1195)、Valid Accounts(T1078)、Exploitation of Public-Facing Application(T1190)、Remote Services(T1021)、Credential Dumping(T1003)です。
    • 影響: 完成前に恒久的な立足点を作られ、開所後にSOCや訓練資産へ段階的横展開されるリスクが高まります。
  • SOCそのものを狙う“静かな持久戦”です。

    • 仮説: SOC要員へのスピアフィッシングから、EDRやログプラットフォームの可視性ギャップを縫って“監視対象を監視する側”を攪乱します。
    • 典型的技術: Spearphishing Attachment/Link(T1566)、PowerShell(T1059.001)、Windows Management Instrumentation(T1047)、Exfiltration Over C2 Channel(T1041)、Defense Evasion via Signed Binary Proxy Execution(T1218)です。
    • 影響: CTIと連接する意思決定ループの信頼性が揺らぎ、相手の観測を誤らせる“センサーポイズニング”に近い効果が生まれます。
  • 訓練レンジのモデル汚染と教範劣化です。

    • 仮説: デジタルツイン的な訓練環境のイメージやシナリオ生成系に改竄を加え、誤学習や誤ったTTP最適化を誘導します。
    • 典型的技術: Modify Existing Service(T1031に相当する振る舞い)、Command and Control over Web Services(T1102)、Data Manipulation(T1565)です。
    • 影響: 人材育成の“精度”が落ち、実戦での検知・封じ込めの成績がジワジワ低下します。投資の戦果が目に見えにくく毀損されます。
  • 施設BMS/OTを足がかりとした横展開です。

    • 仮説: ビル管理システム、出入管理、CCTV、AV会議基盤など、OT/IoTを通じてIT側へ忍び寄ります。
    • 典型的技術: External Remote Services(T1133)、Valid Accounts(T1078)、Lateral Tool Transfer(T1570)、Ingress Tool Transfer(T1105)です。
    • 影響: 直接的な機能停止を狙わずとも、物理空間の認証連携や映像・音声からの情報摂取により、作戦や訓練の断片が漏洩するリスクが高まります。

総じて、完成後のSOC対策だけでは不十分で、設計・建設・試運転を含む“ライフサイクル全体のセキュア化”が成否を分けます。

セキュリティ担当者のアクション

防衛関連に限らず、国内のCISOやSOCマネージャーが自社の大型拠点整備やSOC再編に当てはめられる実務的示唆を整理します。

  • 設計段階からのゼロトラスト設計を徹底することです。

    • 施設BMS/OTはITから物理的・論理的に分離し、遠隔保守経路はPAW(特権アクセスワークステーション)とJIT/JEAで絞り込むことです。
    • 役割ベースの最小権限、強制MFA、ネットワークのL3/L7セグメンテーションを設計図面の時点で確定することです。
  • 施工・立上げフェーズのサプライチェーン防御を“主戦場”と位置づけることです。

    • ベンダーのアカウント発行は短期・限定・監査付きとし、証跡は自動で中央集約することです。
    • 建設・設備・ITの各工程でハニートークンとビーコンドキュメントを配し、早期に不審な持ち出しを検知することです。
    • SBOMと構成証跡の収集を契約要件に入れ、納入物のロールバック・置換手順を事前に合意することです。
  • SOCとCTIの短ループ化を“施設効果”に頼らず先行実装することです。

    • 検知ルールは“演習→本番→振り返り”のカンバンを回し、ATT&CKテクニック単位でCoverageギャップを埋めることです。
    • Purple Team演習を四半期単位で回し、ログ可視性のボトルネック(収集量・保持期間・正規化の欠落)をKPIとして経営に報告することです。
  • “建つ前から攻撃者がいる”前提での監査を回すことです。

    • 受電・空調・出入管理・会議AV等の受け入れ試験にセキュリティ検査を必ず含め、デフォルト資格情報や開発者バックドアの排除を確認することです。
    • 竣工前のレッドチーム演習で、BMSからITへの横展開可否を検証し、是正のための工事差し戻しを許容することです。
  • 情報の価値連鎖を守るための“静かな対スパイ戦”を制度化することです。

    • 採用・見習い枠の拡充時は、内部脅威対策の分離権限と監督フローを設け、教育資料や訓練シナリオへのアクセスは段階的に解放することです。
    • 機微な運用手順や観測窓口は公開RFPや広報資料に書きすぎないことです。公開情報管理はそれ自体がセキュリティコントロールです。
  • 中期案件としての“財務・運用の持続性”を設計することです。

    • 初期CapExに偏らず、検知コンテンツ運用・人材育成・レンジ維持のOpExを5年超スパンでコミットすることです。
    • ベンダーロックインを避けるため、ログや脅威情報の共有フォーマットと抽象化レイヤを定義し、後発ツールの併用余地を残すことです。

本件は、確度と信頼性が高い一方で、真価は“明日すぐ”ではなく完成後に出ます。だからこそ、国内の私たちは先行して「建つ前から守る」「運用ループを短くする」を小さく実装し、拠点が完成する頃には人とプロセスが追い付いている状態を作ることが肝要です。恒久拠点とは、箱ではなく学習エンジンです。投資の矛先を“学習速度”に向けることこそ、最も堅い抑止になります。

参考情報:

背景情報

  • i 英国陸軍は、過去2年間で9万件以上のサイバー攻撃を受けており、これに対抗するための能力強化が求められています。サイバー連隊は、陸軍のネットワークを防御し、サイバー作戦を支援する重要な役割を担っています。
  • i 新しい基地は、サイバー情報およびセキュリティ作戦センターを含む専門的な技術施設を備え、陸軍のサイバー能力を向上させることを目的としています。