2026-02-04

Eclipse FoundationがOpen VSX拡張の事前公開セキュリティチェックを義務化

Eclipse Foundationは、Microsoft Visual Studio Code(VS Code)拡張がオープンソースリポジトリに公開される前にセキュリティチェックを実施することを発表しました。この取り組みは、供給網の脅威に対抗するためのもので、悪意のある拡張が公開されるのを防ぐことを目的としています。これまでのアプローチは、公開後の対応に依存していましたが、今後は事前にチェックを行うことで、悪意のある拡張の流入を防ぎ、開発者の安全を確保することを目指しています。

メトリクス

このニュースのスケール度合い

5.0 /10

インパクト

6.5 /10

予想外またはユニーク度

7.5 /10

脅威に備える準備が必要な期間が時間的にどれだけ近いか

7.0 /10

このニュースで行動が起きる/起こすべき度合い

6.0 /10

主なポイント

  • Eclipse Foundationは、Open VSX Registryにおける拡張の事前公開セキュリティチェックを義務化することを発表しました。
  • この新しいアプローチにより、悪意のある拡張が公開されるリスクを低減し、開発者の安全を確保することを目指しています。

社会的影響

  • ! この取り組みにより、開発者はより安全な環境で作業できるようになり、オープンソースコミュニティ全体の信頼性が向上します。
  • ! 悪意のある拡張が減少することで、開発者の生産性が向上し、より多くの人々がオープンソースソフトウェアを利用することが期待されます。

編集長の意見

Eclipse FoundationがOpen VSX Registryにおいて事前公開セキュリティチェックを義務化することは、オープンソースソフトウェアのセキュリティ向上に向けた重要な一歩です。近年、オープンソースパッケージレジストリは悪意のある攻撃者にとって魅力的なターゲットとなっており、特に開発者を狙った攻撃が増加しています。事前チェックを導入することで、悪意のある拡張が公開されるリスクを大幅に低減できると考えられます。これにより、開発者は安心して拡張を利用できるようになり、オープンソースコミュニティ全体の信頼性が向上します。さらに、Microsoftがすでに導入している多段階の審査プロセスを参考にすることで、Eclipse Foundationは効果的なセキュリティ対策を講じることができるでしょう。しかし、事前チェックの導入には、誤検知や不正なブロックを避けるための調整が必要です。これにより、良心的なパブリッシャーが不当に影響を受けることを防ぐことが求められます。今後は、事前チェックの効果を評価し、必要に応じてプロセスを改善していくことが重要です。最終的には、オープンソースソフトウェアのエコシステム全体がより安全で信頼性の高いものとなることが期待されます。

解説

Open VSXが「公開前セキュリティ審査」を義務化——開発環境サプライチェーンの守りが“入口”へ前進します

今日の深掘りポイント

  • オープンなVS Code互換拡張レジストリであるOpen VSXが、公開前のセキュリティチェックを義務化します。これまでの「公開後の駆除」中心から「公開前の水際対策」へ、ガバナンスの主戦場が移る動きです。
  • 企業側は「レジストリの強化」に依存しすぎず、社内マーケットプレイスの審査・署名検証・拡張のネットワーク権限管理・EDRでのふるまい監視という多層防御を重ねる好機です。
  • この対策は悪性拡張の流入確率を下げますが、依存パッケージ経由の二段階ローディングや既存パブリッシャー乗っ取りなど、審査をすり抜けるシナリオは残ります。検出・封じ込め・復旧のプレイブックを合わせて強化すべき局面です。

はじめに

開発者のIDE拡張は、利便性と引き換えに強力な権限を持ちます。ファイルへのアクセス、プロセス起動、ネットワーク通信、認証情報への接近など、攻撃者にとっても魅力的な実行基盤になり得ます。Eclipse Foundationが運営するOpen VSXレジストリは、この現実に正面から向き合い、公開前のセキュリティチェックを義務化すると報じられています。公開後の対応に依存していた従来方針から、審査を「入口」へ持ち込むことは、開発環境のサプライチェーン防御を一段押し上げるものです。

この一手は即効性があり、現場がすぐ活用できる実務的な改善を生みます。一方で、検査の限界や誤検知・過検知の運用負荷、そして攻撃者の回避戦術を踏まえれば、企業側のゼロトラスト化と多層防御の設計は引き続き不可欠です。以下、事実と示唆を切り分けて考えます。

深掘り詳細

事実関係(報道で確認できる点)

  • Eclipse Foundationは、Open VSXレジストリで配布されるVS Code互換拡張について、公開前のセキュリティチェックを義務化すると報じられています。狙いは悪性拡張の公開を未然にブロックし、開発者の安全を高めることです。
  • 従来は公開後の通報・駆除が中心でしたが、今後は事前審査を導入することで、悪性拡張の流入確率を下げる方針です。
  • オープンソースのパッケージ/拡張レジストリは、開発者を狙う攻撃の「配布チャネル」として重視されており、パブリッシャーアカウントの乗っ取りや毒入り更新などの手口が課題になっています。

出典: The Hacker Newsの報道 です。

編集部のインサイト(効果と限界)

  • 入口対策の前進という評価です。公開前審査は、明白なマルウェア、既知の悪性依存関係、露骨な動的ダウンローダなどの一次検査で確実な抑止効果を発揮します。特に新規パブリッシャーや新設拡張に対しては効く施策です。
  • 一方で、回避余地は残ります。例えば、拡張本体は無害に見せかけ、起動後に外部から第二段階のコードを条件付きでロードする、特定環境のみで挙動を切り替える、人気拡張のパブリッシャーを乗っ取り正規更新として配布する、といった戦術は、静的・サンドボックス検査をすり抜ける余地があります。依存パッケージの奥深くに潜む悪性コードの検出も難所です。
  • 実務上の示唆は三つです。第一に、公開前検査を“安全ベースラインの引き上げ”と捉えつつ、自社は社内マーケットプレイスの審査とSBOM/署名検証で二重化することです。第二に、拡張のふるまい(プロセス生成、外部通信、認証情報アクセス)をEDRとネットワークで可視化・制限することです。第三に、拡張の自動更新と許可リスト運用を組み合わせ、急所となる「人気拡張のサプライチェーン」を押さえることです。
  • 全体感として、実効性が高く、短期に運用へ落ちる良い動きです。ただし、これ単独でリスクが消えるわけではないため、企業側のコントロールと検知体制の成熟度が、次の差別化ポイントになります。

脅威シナリオと影響

以下は、MITRE ATT&CKに照らした近似マッピングを含む仮説シナリオです。個々の環境により差異があるため、あくまで参考枠組みとして活用ください。

  • シナリオA: 新規の悪性拡張が二段階でペイロードを取得するケース

    • ベクトル/初期侵入: Supply Chain Compromise(T1195.002, 近似)、User Execution(T1204)です。
    • 実行: Command and Scripting Interpreter: JavaScript/Node.js(T1059.007)です。
    • 防御回避: Obfuscated/Compressed Files & Information(T1027)です。
    • 発見・収集: Software Discovery(T1518)、System Information Discovery(T1082)です。
    • C2/流出: Application Layer Protocol: Web Protocols(T1071.001)、Exfiltration Over C2 Channel(T1041)です。
    • 影響: 開発用クレデンシャル(Git/PAT、クラウドCLI、SSH鍵)やソースコード、コンテナレジストリのトークンが窃取対象になります。
  • シナリオB: 正規パブリッシャーアカウントの乗っ取りによる毒入り更新

    • 初期: Valid Accounts(T1078)、Supply Chain Compromise(T1195.002, 近似)です。
    • 配布: 自動更新経由で広範なインストール母集団へ伝播します。
    • 実行・持続化: 拡張自体が持続化媒体として機能し、横展開前の拠点化が容易になります(Persistenceはアプリケーションレベルの近似マッピング)です。
    • 影響: 既存ユーザー基盤の信頼を逆手にとるため、検出が遅延しやすいです。
  • シナリオC: タイポスクワッティング拡張

    • 初期: Masquerading(T1036)、User Execution(T1204)です。
    • 影響: 新規導入時に不意に混入し、ローカルのソースコードや設定の読み取りを狙います。
  • シナリオD: 依存パッケージの汚染による間接侵入

    • 初期: Supply Chain Compromise(T1195.002, 近似)です。
    • 影響: 審査を通った拡張が後日、依存の更新で悪性化するリスクが残ります。継続的な再スキャンやバージョン固定の設計が鍵になります。

総じて、機密コードやクラウド管理プレーンへの横展開に直結するため、侵害時の事業影響は大きくなりやすいです。検出の遅延がダメージの乗数になる点を前提に、封じ込めと回復時間(MTTD/MTTR)を短縮する準備が重要です。

セキュリティ担当者のアクション

短期に効く運用強化と、中期の構造的対策を分けて設計することを勧めます。

  • 今すぐ着手(1~4週)

    • 社内マーケットプレイス/許可リストの徹底です。利用可能な拡張は事前審査済みのIDとバージョンに限定し、未知の.vsixインストールを禁止します。
    • 自動更新の統制です。自動更新を全面停止ではなく「社内ミラーで検証済みのバージョンのみ自動適用」という運用に寄せます。
    • 監視の盲点つぶしです。拡張ホストからの外部通信、プロセス生成(PowerShell/curl/nodeの不審連鎖)、ユーザープロファイル配下の拡張ディレクトリへの異常な書き込みをEDRとNDRで可視化します。
    • 機密情報の局所化です。PATやクラウド認証を長寿命トークンから短寿命OIDC/一時クレデンシャルへ移行し、平文保存を排除します。
  • 今四半期で整える(1~3か月)

    • 社内ミラー/プロキシ運用です。Open VSXのミラーやキャッシュで取り込み、受け入れ前にSBOM生成・署名検証・静的スキャン(child_process/eval/netなど高リスクAPIの使用検知)を行います。
    • パブリッシャー信頼モデルです。拡張は「検証済み発行者/強い多要素/リカバリ手順公開済み」のものを優先採用し、乗っ取り時の一斉無効化手順をプレイブック化します。
    • 検知エンリッチです。拡張の更新イベント、珍しい組み合わせのプロセス連鎖、深夜帯の外向きPOSTなど、行動プロファイルをルール化します。
    • レッドチーム/TTXです。悪性拡張を模したテーブルトップ演習で、検知から封じ込め、開発者通知、ロールバック、秘密情報ローテーションまでの一連を時短検証します。
  • 構造的対策(3か月~)

    • ゼロトラスト開発環境です。開発端末からの外向き通信を最小化し、拡張ホストのネットワーク権限を分離・制限します。リモート開発/コンテナ化で端末上の秘密情報を減らします。
    • 署名/真正性の強化です。拡張パッケージの署名・ハッシュ固定、入手経路の制限、検証失敗時の実行拒否をポリシー化します。
    • 継続スキャンとロールバックです。採用済み拡張に対する定期再スキャンと、異常検出時の自動ロールバック手順(バージョン固定/強制アンインストール/代替ツール提示)を自動化します。
    • メトリクス駆動の運用です。拡張関連インシデントの検知率、封じ込め時間、ロールバック成功率、偽陽性率を継続測定し、運用の過不足を定量で見直します。

最後に、今回の発表は信頼できる方向への確かな一歩であり、短期の実務改善にも直結する動きです。一方で、攻撃者は検査の盲点を素早く突いてきます。入口の強化を土台に、社内の許可リスト、ふるまい監視、秘密情報の短寿命化という三点を同時に進めることが、現実的で効果的な防御線になります。

参考情報

背景情報

  • i Eclipse Foundationは、オープンソースのVS Code拡張を管理するOpen VSX Registryを運営しています。最近、オープンソースパッケージレジストリは攻撃の標的となっており、悪意のある拡張が開発者に対して大規模に攻撃を行う手段として利用されています。
  • i MicrosoftはすでにVisual Studio Marketplaceにおいて、マルウェアスキャンや新規パッケージの再スキャンを行う多段階の審査プロセスを導入しています。Eclipse Foundationもこれに倣い、事前チェックを導入することで、悪意のある拡張の流入を防ぐことを目指しています。