2026-01-21

EUが技術供給チェーンのサイバーセキュリティ規則を強化

欧州委員会は、EUのサイバー耐性を強化するための新しいサイバーセキュリティパッケージを提案しました。この中には、ICT供給チェーンを保護し、EU市民に安全な製品を提供するための改訂されたEUサイバーセキュリティ法が含まれています。改訂されたサイバーセキュリティ法は、リスクベースのアプローチに基づくICT供給チェーンのセキュリティフレームワークを確立し、重要なセクター全体でリスクを特定し軽減する手助けをします。また、EU内での高リスクの第三国供給者からのモバイル通信ネットワークのリスク軽減が義務付けられています。

メトリクス

このニュースのスケール度合い

8.0 /10

インパクト

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予想外またはユニーク度

7.0 /10

脅威に備える準備が必要な期間が時間的にどれだけ近いか

6.0 /10

このニュースで行動が起きる/起こすべき度合い

6.0 /10

主なポイント

  • 改訂されたサイバーセキュリティ法は、ICT供給チェーンのセキュリティフレームワークを確立し、リスクを軽減することを目的としています。
  • 新しいサイバーセキュリティパッケージは、EU内での企業のコンプライアンスを簡素化し、ENISAの役割を強化します。

社会的影響

  • ! この新しい法案は、EU市民に対してより安全なICT製品を提供することに寄与します。
  • ! 企業は、サイバーセキュリティの強化により、顧客の信頼を高めることが期待されます。

編集長の意見

EUの新しいサイバーセキュリティ法は、ICT供給チェーンのセキュリティを強化するための重要なステップです。リスクベースのアプローチを採用することで、EUと加盟国は、サイバー脅威に対するより効果的な対策を講じることができます。特に、モバイル通信ネットワークにおける高リスクの第三国供給者からのリスク軽減は、国家安全保障の観点からも重要です。ENISAの役割が強化されることで、サイバー脅威に対する早期警告や脆弱性管理サービスの提供が期待されます。これにより、企業はサイバーインシデントに迅速に対応し、復旧するための支援を受けることができます。また、サイバーセキュリティスキルアカデミーの設立は、EU全体でのサイバーセキュリティ人材の育成に寄与し、長期的にはサイバーセキュリティの専門家不足を解消する助けとなるでしょう。今後の課題としては、企業が新しい規則に適応するためのコストやリソースの確保が挙げられます。企業は、これらの新しい規則に準拠するための戦略を早急に策定し、実行に移す必要があります。

解説

EUがICTサプライチェーン規制を一段押し上げ—「リスクベース×通信網の高リスク供給者対策」で実務が変わります

今日の深掘りポイント

  • 欧州委が「改訂版EUサイバーセキュリティ法」を含むパッケージを提案。ICTサプライチェーン向けのリスクベース・フレームワークと、モバイル通信網での高リスク第三国供給者リスク軽減を義務化する方針です。
  • 監督・認証・サプライヤー管理が一本化され、ENISAの役割が強化される見込みです。結果として「セキュア・バイ・デザイン」と供給者の可視化(透明性)に実効性が生まれます。
  • 日本企業にとっては、欧州向け出荷・運用の両面で準拠対応が前倒しになります。法制化のタイムラグはあっても、準備の遅れはコスト化しやすい領域です。
  • 攻撃側は引き続き「信頼された関係」「アップデート経路」「リモート保守」を突きます。サプライチェーンに起点を置く脅威仮説とATT&CKマッピングを示します。
  • メトリクスは確度・信頼性が高く、実装は中期戦。今から「ノーリグレットな備え(SBOM取得、第三者アクセスの強化、ベンダー階層化)」が費用対効果に優れる局面です。

はじめに

欧州は「規制で市場を形作る」ことに長けています。今回の提案も、製品ごとの点対策から、供給網と運用までを見渡す線・面の管理へ舵を切る試みです。表向きは「負担軽減」と「ENISA強化」ですが、本丸はサプライチェーンの一貫性と、通信網における地政学的リスクの扱いを制度面で明確にする点にあります。日本のCISOやSOCにとっては、自社が欧州に製品を出すかどうかに関係なく、グローバル顧客の要件がEU標準に寄っていく現実に向き合うタイミングです。準備を先行した組織ほど、のちの設計変更・調達差し替えの痛みを抑えられます。

深掘り詳細

何が起きたのか(事実)

  • 欧州委員会が「EUのサイバー耐性強化」を狙う新パッケージを提案し、その中核として改訂版EUサイバーセキュリティ法を提示しています。
    • ICTサプライチェーンのリスクベース・フレームワークを立ち上げ、重要セクター横断でリスク把握・軽減を促す構図です。
    • EU域内のモバイル通信網について、高リスクの第三国供給者から生じるリスクを軽減することが義務付けられる方向です。
    • コンプライアンスの簡素化とENISAの役割強化が併走し、早期警戒や脆弱性管理に関する機能強化が示唆されています。
  • これらは「提案」段階であり、正式な適用までにはプロセスが続きますが、方向性自体は明確です。
  • 出典は以下の一次報道です(一次公文書への直接リンクは本稿作成時点で未確認です)。

ここが効いてくる(インサイト)

  • 認証から運用、供給者の選定までを「リスクに応じて」束ねることで、ばらばらに存在していたガイドラインや認証スキーム、監督の線が一本になります。結果として、製品開発側は設計初期からセキュリティ検証とサプライヤー証跡(SBOM等の透明性手段)を織り込み、運用側はベンダー・リスク軽減(代替化や機能分離)を意思決定に乗せる必要があります。
  • 通信網の「高リスク供給者」対策は、単純なベンダー排除の話に矮小化すべきではありません。実務では、以下の二重管理が鍵になります。
    • 技術的軽減:リモート保守経路の分離・強化、署名更新の段階隔離、測定済みブートやファームウェア改ざん検知などの耐故障化です。
    • 組織的軽減:供給者階層化(Critical/High/Moderate/Low)、契約上の可監査性・インシデント通知・脆弱性開示義務の標準条項化です。
  • メトリクスから読み取れるのは、発表の確度と信頼性が高く、影響範囲が広い一方で、実装の即時性は中程度だということです。つまり「いま決めて、来期から回す」レベルの準備が最も投資効率が高い段階に来ていると見ます。待ってからの追随は、装置更改や構成変更のやり直しコストが跳ねやすいです。
  • 日本企業への含意は二つです。
    • 欧州顧客・欧州拠点向けの準拠設計を先に作ると、他地域にも横展開でき、結果として全社標準が上がります。
    • 「第三国」ラベルの扱いが政治的に揺れても、リスク基準(透明性・可監査性・運用分離・脆弱性対応速度)に沿った社内規格を置けば、政策変動に左右されにくいレジリエンスを確保できます。

脅威シナリオと影響

以下は本提案の趣旨と足元の攻撃動向を踏まえた仮説シナリオです。MITRE ATT&CKに沿って、検知・軽減の焦点を明示します。

  • シナリオ1:ベンダーのアップデート経路を起点とした通信装置の侵害

    • 初期侵入: Supply Chain Compromise(供給網侵害)/ Trusted Relationship(信頼された関係)
    • 実行・持続化: Signed Binary Proxy Execution(署名済みバイナリ悪用)、Component Firmware改ざん(Pre-OS Boot/ファームウェア改変)
    • 防御回避: Obfuscated/Compressed Files & Information(難読化)
    • 影響: Service Stop/Network Denial of Service(サービス停止・ネットワークDoS)、あるいは低速な情報搾取
    • 含意: アップデートの段階的展開(カナリア)、オフライン検証、サプライヤー署名鍵ローテーション監査が効きます。
  • シナリオ2:リモート保守経路を介したNOC/運用系からの横展開

    • 初期侵入: Valid Accounts(正規アカウント悪用)、Exploitation of Remote Services(リモートサービス悪用)
    • 横展開: Lateral Movement(RDP/SSH踏み台)、Credential Dumping(認証情報抽出)
    • 発見回避: Living-off-the-Land(標準ツール悪用)
    • 影響: 構成変更・一部のバックドア化・監視盲点の形成
    • 含意: ベンダーアクセスのゼロトラスト化(JIT/JEA、mTLS、強制録画と録音、コマンド許可リスト)、監査証跡の不変化が重要です。
  • シナリオ3:ソフトウェア依存関係の汚染を通じたエンタープライズ側侵害

    • 初期侵入: Supply Chain Compromise(依存関係の汚染)
    • 実行: User Execution(ユーザー実行)/ Script Execution
    • データ流出: Exfiltration Over Web Service(クラウドストレージ/ウェブ経由)
    • 影響: 機微設計情報の漏えい、顧客データの二次被害
    • 含意: SBOM収集と差分監視、VEXで影響可否の迅速判定、隔離ビルドと再現可能ビルドの採用が奏功します。

全体として、攻撃側は「信頼」と「便利」を同時に突きます。防御側は「信頼の分割(最小化)」「便利の計測(可視化)」を進めることで、被害の面積を縮め、回復を早める設計に寄せるべきです。

セキュリティ担当者のアクション

「法はまだ提案段階」でも、着手して損のないノーリグレット施策は明確です。CISO/SOC/調達の3つのレーンで優先度高の打ち手を整理します。

  • ガバナンスと全体設計

    • 欧州関与の棚卸し:EU域内拠点、EU顧客向け出荷、EU居住者データの取り扱いを可視化し、規制影響のスコープを確定します。
    • サプライヤー階層化の標準:Critical/High/Moderate/Lowの4階層で、証跡要件(SBOM/VEX、脆弱性開示SLA、リモート保守要件)を明文化します。
    • セキュア・バイ・デザインのゲート:製品・サービスの開発レビューに、脆弱性管理(PSIRT)、依存関係の衛生(署名・再現可能ビルド)、運用時の最小権限・観測性を必須化します。
  • 調達・契約

    • 標準条項のアップデート:インシデント通知、脆弱性報告・修正SLA、第三者審査受入れ、暗号鍵運用、署名更新の手順、バックドア禁止・検査権限を雛形に組み込みます。
    • ベンダーアクセスの分離:保守用踏み台、時間制限付きのJIT権限、録画・コマンド監査、強制多要素、生体情報非依存のハードトークン導入を求めます。
    • マルチベンダー前提の設計:機能分割と相互代替性を確保し、特定供給者のリスク軽減に備えます。
  • SOC/脅威インテリジェンス

    • ATT&CKでの検知設計:上記シナリオ(Supply Chain/Trusted Relationship/Valid Accounts/Component Firmware改ざん等)に対する検知・狩りのユースケースを定義します。
    • 署名とビルドの健全性監視:署名鍵の失効・差し替えの異常、アップデートのメタデータ不整合、配布元のハッシュ逸脱を継続監視します。
    • ベンダー横断の弱点共通知:脆弱性通報や観測結果を、PSIRT・購買・法務に横串で流す仕組みを整えます。
  • ネットワーク・プラットフォーム運用

    • ファームウェア健全性の担保:測定済みブート、ロールバック防止、構成の二重化と迅速な切り戻しを整備します。
    • 更新の段階展開:ラボ検証→カナリア→広域展開の3段階と、機能フラグでの影響限定をセットにします。
    • テレメトリの充実:ベンダー保守経路の全パケットを復元可能な形で保存し、異常検知と事後鑑識に使えるよう構成します。
  • 経営・ロードマップ

    • 12週間プランの設定:在庫(資産・ベンダー・契約)の可視化、クリティカル供給者の再評価、標準条項の刷新、SOCユースケースの優先順位付けまでを四半期で完了します。
    • 来期以降の投資計画:SBOM管理基盤、アイデンティティ境界の近代化(JIT/JEA)、ファームウェア検査機能の拡充に継続投資します。

最後に強調したいのは、「規制待ち」ではなく「市場が先に変わる」という現実です。欧州のお客さまやパートナーの要件が先に高まり、調達票と監査項目に落ちます。そこで躓かないために、今日から組織の語彙とプロセスを“リスクベースの供給網運用”に合わせ込むことが、最も費用対効果の高い一歩になります。

参考情報

背景情報

  • i EUのサイバーセキュリティ法は、ICT供給チェーンのセキュリティを確保するために、リスクベースのアプローチを採用しています。このアプローチにより、EUと加盟国は重要なセクターにおけるリスクを特定し、経済的影響を考慮しながら軽減することが可能になります。
  • i 改訂されたサイバーセキュリティ法は、ENISAの役割を強化し、サイバー脅威に対する理解を深め、サイバーインシデントへの準備と対応を改善することを目指しています。ENISAは、サイバーセキュリティスキルアカデミーを立ち上げ、EU全体のサイバーセキュリティ人材の育成を支援します。