2026-02-02

ファンシーベアがウクライナとEUのサイバー攻撃でMicrosoft Officeの脆弱性を悪用

ロシアに関連するハッキンググループ「ファンシーベア(APT28)」が、Microsoft Officeの新たに発表された脆弱性を利用して、ウクライナおよびEUの組織に対するサイバー攻撃を行ったと報告されています。この脆弱性はCVE-2026-21509であり、Microsoft Officeの複数のバージョンに影響を及ぼします。CERT-UAは、攻撃の詳細を明らかにし、ユーザーに対して迅速なアップデートを促しています。

メトリクス

このニュースのスケール度合い

10.0 /10

インパクト

8.0 /10

予想外またはユニーク度

7.0 /10

脅威に備える準備が必要な期間が時間的にどれだけ近いか

9.0 /10

このニュースで行動が起きる/起こすべき度合い

7.0 /10

主なポイント

  • ファンシーベアは、CVE-2026-21509という脆弱性を利用して、ウクライナの中央行政機関に対するサイバー攻撃を実施しました。
  • CERT-UAは、Microsoft Officeのアップデートを適用するようユーザーに呼びかけており、攻撃の増加が予想されています。

社会的影響

  • ! この攻撃は、ウクライナの国家機関に対する信頼を損なう可能性があり、国際的なサイバーセキュリティの脅威を浮き彫りにしています。
  • ! EU諸国におけるサイバー攻撃の増加は、地域の安全保障に対する懸念を高め、対策の強化が求められています。

編集長の意見

ファンシーベアによるCVE-2026-21509の悪用は、サイバーセキュリティの脅威が依然として高いことを示しています。この脆弱性は、Microsoft Officeの広範な利用により、多くの組織が影響を受ける可能性があります。特に、ウクライナのような地政学的に緊張した地域では、サイバー攻撃が国家の安全保障に直結するため、迅速な対応が求められます。CERT-UAの報告によれば、攻撃者は特定の文書を利用して、ユーザーが無防備な状態で悪意のあるコードを実行させる手法を採用しています。これにより、組織内の情報が漏洩するリスクが高まります。今後、企業や政府機関は、Microsoftからのセキュリティアップデートを迅速に適用し、脆弱性を悪用されないようにする必要があります。また、ユーザー教育も重要であり、怪しいメールや添付ファイルを開かないようにする意識を高めることが求められます。さらに、サイバー攻撃に対する防御策を強化するために、ネットワーク監視や侵入検知システムの導入を検討することが重要です。これにより、攻撃の早期発見と迅速な対応が可能となります。

解説

APT28が公開直後のMicrosoft Office脆弱性(CVE-2026-21509)を悪用し、文書経由でRCEに到達する攻撃を展開しています

今日の深掘りポイント

  • マクロ無効化では防げない領域の脆弱性悪用。Office文書が外部リソースへ接続してペイロードを取得する鎖が鍵です。
  • 公開直後のN-dayを国家系アクターが素早く運用化。パッチ適用の遅延が直撃する典型パターンです。
  • 影響はOffice 2016/2019/LTSC 2021・2024/Microsoft 365 Appsに及ぶと報じられ、広範なエステートが対象になります。
  • ウクライナ中央行政・EU関連機関が狙い。日本でもEU・NATO支援案件、または同サプライチェーンに位置する組織は要警戒です。
  • 短期はASR・GPOでの外部テンプレート/子プロセス抑止とEDRハンティング強化、中期は段階的パッチ適用のリスクベース優先度見直しが効きます。

はじめに

ロシア関連のAPT28(Fancy Bear)が、Microsoft Officeの新規公開脆弱性(CVE-2026-21509)を使い、ウクライナとEUの組織に対してスピア型文書攻撃を仕掛けていると報じられています。CERT-UAが注意喚起を行い、Microsoft Officeの迅速な更新を促している状況です。今次のポイントは、組織が長年チューニングしてきた「マクロ規制」や「保護ビュー」の外側で、文書の外部リソース解決とOLEまわりの緩和回避を突くことでRCEに踏み込んでいる点にあります。攻撃者の運用速度が防御側のパッチ適用サイクルを上回ると、広いフットプリントのOffice環境が一斉に脅威へ接続してしまいます。こうした「N-day直後の実運用化」に対して、われわれはどう守るべきかを整理します。

参考:本件はInfosecurity Magazineの報道が第一報の位置づけです。一次情報(ベンダー/CSIRTの公式アドバイザリ)を確認次第の詳細更新が前提になります。

深掘り詳細

事実(報道から読み取れること)

  • APT28(Fancy Bear)がMicrosoft OfficeのCVE-2026-21509を悪用し、ウクライナの中央行政機関やEU関連組織を標的に攻撃していると報じられています。CERT-UAがアップデートの適用を呼びかけています。報道
  • 影響プロダクトはOffice 2016、2019、LTSC 2021、LTSC 2024、Microsoft 365 Apps for Enterpriseとされ、深刻度は高(CVSS v3.1で高水準)との説明です(数値は報道に依拠)。
  • 背景説明として、脆弱性は「信頼できない入力への過度依存によるセキュリティ決定の欠陥」で、OLE関連の緩和策を回避し、文書を開くだけで外部リソースへの接続→ペイロード取得→コード実行へ至るチェーンが成立する、とされています(本文提供情報に基づく)。
  • ルアーはウクライナのEU常駐代表関連文書を装うものが含まれるとされ、典型的な地政学テーマのソーシャルエンジニアリングが想定されます。

注:上記は公開報道・提供情報の範囲に基づく整理です。公式アドバイザリの技術詳細(攻撃ベクタの正確な仕様、回避される緩和策の特定、CVEの公式スコアや影響範囲の最終確定)は公表内容の確認を待つ前提です。

インサイト(何が新しく、何が痛いか)

  • 公開直後のN-dayを「文書経由RCE」の実用鎖に組み込む運用力が注目点です。マクロ規制やMark-of-the-Web(MoTW)頼みのレガシー防御をすり抜け、外部テンプレート/OLE経由の実行パスを突くことで、ユーザー操作の最小化やEDR前段の検知回避が狙えます。結果として、ゼロクリックではないにせよ、ユーザーに特別な許可操作を強いないケースが増えます。
  • 影響面では「Officeが入っている端末すべてが対象」という広さが最大の難点です。とりわけVDI/共有端末や現場設備連携PC、更新リズムが遅れがちなLTSC系の溜まりにリスクが集中しやすいです。
  • 攻撃運用の観点では、外部テンプレートやリモートリソース取得は、標準的なプロトコル(HTTPS/HTTP)を使い、正規CDNやクラウドストレージにホストを寄せるだけでネットワーク監視を鈍らせられます。メール添付フィルタやサンドボックスを通過して、端末のWINWORD/EXCEL/POWERPNTプロセスが直接インターネットに触れる点を防御・検知の主戦場に据える必要があります。
  • 日本企業の射程については、EU調達・支援案件、政府/研究機関との共同プロジェクト、在欧拠点・ベンダー経由の横断的なサプライチェーンが現実的な踏み台になります。国内単体のリスクよりも、対欧連携の足回り(メール往来、共同文書、SharePoint/OneDrive共有)が狙われやすいです。

脅威シナリオと影響

以下は報道と一般的なAPT28の運用実績に基づく仮説であり、詳細は公式アドバイザリの確認後にアップデートされる前提です。

  • シナリオA:スピアフィッシング文書によるクライアント実行

    • 初期侵入: T1566.001 Spearphishing Attachment(標的業務文書を装ったOfficeファイル)
    • 実行: T1203 Exploitation for Client Execution(CVE-2026-21509)/ T1221 Template Injection(リモートテンプレート/外部リソース参照)/ T1204.002 Malicious File
    • 防御回避: T1218 Signed Binary Proxy Execution(rundll32/mshta/regsvr32などを子プロセスで)/ T1036 Masquerading
    • C2: T1071.001 Application Layer Protocol: Web Protocols(HTTPSでのビ―コン/ペイロード二段階取得)
    • 調査・横展開: T1082 System Information Discovery / T1018 Remote System Discovery / T1021 Remote Services
    • 資格情報: T1003 OS Credential Dumping / T1555 Credentials from Password Stores
    • 流出: T1041 Exfiltration Over C2 Channel
    • 影響: 部局単位のアカウント/文書管理基盤(SharePoint/OneDrive/メール)の機密性低下、ドメイン横展開による広範侵害。
  • シナリオB:EU関連案件の共同作業を踏み台にしたサプライチェーン侵入

    • 初期侵入はAと同様だが、共同文書ストレージや共同編集プラットフォームへのアクセス権奪取を重視。認証トークン窃取や条件付きアクセス回避を狙う派生(T1550 Use of Web Session Cookie)を組み合わせる。
    • 影響は相手方(欧州側)のテナントにも波及しうるため、国際案件での横断的インシデント連携が必須。
  • シナリオC:更新遅延のVDI/現場端末セグメントを狙った持久化

    • パッチが遅いセグメントでOffice起動時の仕組み(T1137 Office Application Startup)やレジストリRunキー(T1547.001)を用いた持久化を構築。
    • 影響は現場オペレーションの信頼性劣化や、業務停止を避けるために防御側が踏み込めない「デッドゾーン」化です。

総じて、短期間での被害顕在化可能性が高く、攻撃の信憑性も高水準と見られます。一方、新奇性は「ゼロデイ」ではなく「公開直後N-dayの迅速運用化」にあり、ここに防御側の可動性(迅速な緩和・観測・段階パッチ)が試されます。

セキュリティ担当者のアクション

「今日すぐ」「72時間」「7~14日」で分け、現実的な順序で提示します。環境差の大きい施策はパイロット適用から始める前提です。

  • 今日すぐ(0~24時間)

    • 影響資産の特定と緊急リングの設定
      • Office 2016/2019/LTSC 2021・2024・Microsoft 365 Apps for Enterpriseの使用端末を棚卸しし、優先度(役職・権限・外部協業の多寡)でパッチ適用リングを切り分けます。
    • 代替緩和の即時適用
      • ASR「Officeによる子プロセス生成のブロック」「Officeからの疑わしいAPI呼び出しのブロック」「Win32 APIコールの制限」に相当するルールを有効化します(互換性はパイロットで検証しつつ段階拡張)。
      • GPO/管理テンプレートで「リモートテンプレート/外部コンテンツの自動取得を無効化」「OLEの自動リンク更新を禁止」「インターネットゾーンのコンテンツ無効化」を適用します。
    • 検知とハンティングの強化
      • winword.exe/excel.exe/powerpnt.exeが直後に起動する子プロセス(cmd.exe, powershell.exe, mshta.exe, rundll32.exe, regsvr32.exe, wscript.exe, cscript.exe, msiexec.exe)を高優先度で監視・検知します。
      • Officeプロセスの外向き通信(特に新規・未知FQDN/ASN、短時間にTLSハンドシェイクとプロセス生成が交差するもの)を相関検知します。
    • メール/ゲートウェイの防御強化
      • .docm/.doc/.rtf等の高リスク拡張子を一時的に隔離運用し、動的サンドボックス/安全な添付ファイル配信(ダイナミックデリバリー)の厳格化を行います。
  • 72時間以内

    • パッチ適用の加速
      • クリティカル資産から優先適用し、失敗台帳とロールバック手順を準備します。LTSC/現場端末は計画停止ウィンドウを用意し、代替緩和を先行させます。
    • 可視化の恒常化
      • 「Office→子プロセス」「Office→外向き通信」のダッシュボード化、既知正常パターンのホワイトリスト整備で誤検知負荷を低減します。
    • コンテンツ制御の精緻化
      • 取引先・省庁・研究機関など許可ドメイン以外のリモートテンプレート/外部参照をプロキシでブロック、またはユーザー承認フローに入れます。
  • 7~14日

    • プレイブック更新と訓練
      • 「公開直後N-dayの実運用悪用」プレイブックを改訂し、メール→文書→外部取得→EDR相関までの机上演習を回します。
    • セグメンテーション/最小権限の徹底
      • ドキュメント共同作業のアクセス制御、アプリ間トークン再利用の抑止、条件付きアクセスの厳格化(デバイス準拠必須)を進めます。
    • 監査とロジ拡充
      • OneDrive/SharePoint/Exchange Onlineの監査ログで不審な共有拡大、匿名リンク生成、セッション異常(深夜帯/新規ASN)を狩ります。

運用の肝は、「パッチが間に合わない時間」を前提に、Officeの外部リソース取得と子プロセス生成という“実行の首”を短期で縛り、EDR/ネットワークでの相関観測を厚くすることです。技術施策は強力ですが、共同作業や自動化マクロに影響を与えうるため、パイロット→段階拡張→恒常化の順で丁寧に運ぶのが結果的に最速です。

参考情報

(注)本稿は公開報道と提供情報に基づく時点分析です。一次情報(Microsoftの公式アドバイザリ、CERT-UAの技術詳細)の確認と更新が入り次第、検知・緩和手順の精度をさらに高めることを推奨します。

背景情報

  • i CVE-2026-21509は、Microsoft Officeにおけるセキュリティ決定において信頼できない入力に過度に依存する脆弱性です。この脆弱性を悪用されると、攻撃者はOLEの緩和策を回避し、悪意のあるコードを実行することが可能になります。
  • i ファンシーベアは、ウクライナのEU常駐代表委員会に関連する文書を通じて攻撃を行い、特定のファイルを開くことで外部リソースへの接続を引き起こし、悪意のあるペイロードをダウンロードする仕組みを利用しました。