2026-02-18

Microsoft、Officeのバグが顧客の機密メールをCopilot AIに露出させたと発表

Microsoftは、Officeのバグにより、顧客の機密メールが数週間にわたりCopilot AIによって要約されていたことを確認しました。このバグは、データ損失防止ポリシーが適用されているにもかかわらず、顧客のメール内容を読み取ることを可能にしました。Microsoftは、2月の初めに修正を開始したと述べていますが、影響を受けた顧客の数については明らかにしていません。欧州議会は、AI機能が機密情報をクラウドにアップロードする可能性があるとして、作業用デバイスでのAI機能をブロックしたと報告されています。

メトリクス

このニュースのスケール度合い

7.0 /10

インパクト

8.0 /10

予想外またはユニーク度

7.0 /10

脅威に備える準備が必要な期間が時間的にどれだけ近いか

8.5 /10

このニュースで行動が起きる/起こすべき度合い

8.5 /10

主なポイント

  • Microsoftは、Officeのバグにより、顧客の機密メールがCopilot AIに無断で要約されていたことを確認しました。
  • このバグは、データ損失防止ポリシーがあっても、顧客のメール内容を読み取ることを可能にしました。

社会的影響

  • ! この問題は、企業や個人のプライバシーに対する信頼を損なう可能性があります。
  • ! 特に、機密情報を扱う業界においては、データ保護の重要性が再認識されるきっかけとなるでしょう。

編集長の意見

この問題は、AI技術の進化とともに、データ保護の重要性がますます高まっていることを示しています。MicrosoftのCopilot AIは、業務効率を向上させるための強力なツールですが、同時に機密情報の取り扱いに関するリスクも伴います。特に、データ損失防止ポリシーが適用されているにもかかわらず、機密情報が誤って処理される事例は、企業にとって深刻な問題です。今後、企業はAI技術を導入する際に、データ保護の観点からのリスク評価を行う必要があります。また、ユーザーに対しても、AI機能を利用する際の注意喚起が求められます。さらに、Microsoftは、影響を受けた顧客に対して透明性を持って情報を提供し、信頼回復に努めるべきです。AI技術の進化は止まらないため、企業は常に最新のセキュリティ対策を講じることが求められます。データ保護のための新たな基準を設け、技術の進化に対応したセキュリティ対策を強化することが、今後の課題となるでしょう。

解説

Copilotが機密メールを要約——DLPと実運用の“あいだ”に潜むAIパイプラインの盲点が露呈しました

今日の深掘りポイント

  • ポリシー適用の“正面ルート”は堅牢でも、生成AIの取得・要約パイプラインという“側道”で抜け落ちが生じうることが実証されました。
  • 影響は「数週間」かつ「対象不明」との報。確度は高い一方で、被害規模の不確実性が残るため、現場は監査と機能制限を優先する局面です。
  • DLPや機密ラベルを万能の盾と見なす前提が崩れ、ABAC(属性ベース)での都度評価をAIの取得段に組み込む“設計レベル”の対策が必要です。
  • 監査の盲点(要約行為の可視化不足)と、ライセンス/機能の迅速なキルスイッチ運用の重要性が浮き彫りになりました。
  • EU議会のAI機能ブロックは、規制・ガバナンス側のカウンターシグナル。全社展開前に「AIガバナンス最小公倍数」を制度化する好機です。

はじめに

Microsoft 365の生産性機能に生成AIが深く溶け込み、業務現場で「AIが当たり前」になりつつある今、我々が信頼してきたDLPや機密ラベルのガードが、AIの取得・要約パイプラインでは“同じ強度で”適用されていない可能性が明らかになりました。今回の一件は、ゼロトラストの原則をAIワークフローへ拡張する必然性を照らし出す出来事です。即応性・実務性の観点で優先度は高く、ただし影響規模は不明瞭——この組み合わせは、CISOやSOCがもっとも神経を使う局面です。短期の検証・抑止と同時に、中期の設計見直しへ踏み出すべきタイミングです。

深掘り詳細

事実関係(速報ベース)

  • Microsoftが、Officeのバグにより、データ損失防止(DLP)ポリシーが適用されているにもかかわらず、顧客の機密メールが数週間にわたりCopilot AIで要約されていた事象を認めたと報じられています。
  • 修正は2月初旬に開始されたものの、影響を受けた顧客数は非公表です。
  • 併せて、欧州議会が機密情報のクラウドアップロード懸念から、公用デバイスでのAI機能をブロックしていることも報じられています。
    出典: TechCrunch

上記は一次報道の内容に依拠します。Microsoftの公式RCA(Root Cause Analysis)やサービス通知がまだ一般に参照できない状況では、確定的な技術因果の断定は避けるべきです。本稿では、組織がいますぐ着手すべき確認・抑止・設計改善の観点を中心に論じます。

編集部のインサイト(どこで何が“外れた”か)

  • なぜDLPをすり抜けたのか(仮説)
    DLPや機密ラベルは、通常の閲覧・転送・共有といった“正面ルート”の操作に強くひも付いています。一方、生成AIのパイプラインは「検索(RAG)→取得→要約→提示」という独自のフローをもち、取得段での権限・属性評価(ABAC)やラベル解釈、ポリシー強制の“順守タイミング”がUI操作と異なる可能性があります。今回のバグは、この“取得段の評価”や“提示前フィルタ”のどこかでラベルやDLPの評価が欠落、もしくは逸脱していたシナリオが合理的です(仮説であり、公式RCA待ちです)。

  • 「安全は層でつくる」の再確認
    AIの安全は「前処理(プロンプト制御)」「取得制御(最小権限・属性評価)」「生成制御(秘匿情報の抑止)」「後処理(マスキング・脱感作)」という層で成り立ちます。DLPは重要な層のひとつですが、AIパイプラインに“お作法通り”伝播させなければ効力を失います。特に取得段のABACを徹底し、生成段でもラベルベースのマスキングや提示ブロックを二重化する設計が必須です。

  • 可視化の課題=「読まれた」の足跡が見えにくい
    従来の監査は「誰がメールを開いたか」を捉えますが、AIが“代理で読み・要約して提示した”場合、その足跡が標準の閲覧イベントと同じ粒度で残らない環境も想定されます。可視化されない読み取りは、DLP逸脱の早期検出を難しくします。組織は「AIによる取得・提示」という行為を、独立の監査イベントとして扱えるかを棚卸しすべきです。

  • ガバナンスの文脈
    EU議会のブロックは、規制・公共セクターが「クラウドAIの想定外処理」を重大リスクと位置づけているシグナルです。民間企業も、全社展開を急ぐ圧力に抗し、少なくとも“高秘匿領域のデフォルト無効化+例外許可制”というミニマム・ガバナンスを確立すべき局面です。

脅威シナリオと影響

以下は、公式RCA前提の不在を踏まえた“仮説ベース”のシナリオです。MITRE ATT&CKは該当しうるテクニックを併記します。

  • シナリオ1:有効アカウントの悪用で「見えない閲覧」を誘発

    • 経路: 攻撃者がフィッシング等で社内アカウントを乗っ取り、Copilotに対して機密ラベル付メールの要約を指示。DLPは通常操作に対しては有効でも、要約提示のパイプラインで逸脱が生じ、実質的なメール収集が成立。
    • ATT&CK: T1078 Valid Accounts / T1114.002 Email Collection: Remote Email Collection
    • 影響: 横展開の判断材料(役割・計画・資格情報断片)が要約で抽出され、次段の権限昇格やBEC、社内スピアフィッシングの精度が上がります。
  • シナリオ2:内部不正(インサイダー)が“要約”を外部拡散

    • 経路: 正規ユーザーがCopilotで秘匿スレッドを要約し、サードパーティSaaSに貼り付ける。DLPは転送や添付で効くが、要約テキストの二次流出は見逃しやすい。
    • ATT&CK: T1213 Data from Information Repositories / T1567 Exfiltration Over Web Service
    • 影響: 情報の“抽象化”により、元メールの痕跡を薄めつつ本質を外部へ流出させるため、発覚・遡及が困難になります。
  • シナリオ3:プロンプト注入を起点に、想定外リソースの参照が拡張(仮説)

    • 経路: 整形不備のプロンプトで、AIが“参照可能と誤認”する範囲を拡大。取得段のABAC・ラベル評価が抜け落ちた場合、利用者権限外の情報要約が滑り込む恐れ。
    • ATT&CK: T1213 Data from Information Repositories(広義の誤用)
    • 影響: 一見無害なチャット経緯で、ポリシーを跨いだ情報断片が混入。検知はさらに難しくなります。

総じて、機密性の毀損リスクは高く、短期では監査・抑止の即応が必要です。一方、プラットフォーム側の修正だけでは同質の事象再発(設計クラスの問題)を防ぎきれないため、取得段ABACの徹底・提示段の二重抑止・可観測性の強化という“三点セット”を設計標準に持ち込むべきです。

セキュリティ担当者のアクション

短期(48–72時間)

  • ベンダー通知の一次確認
    • Microsoft 365 管理センター(メッセージセンター/サービス正常性)で本件に関する告知・RCA・緩和策の有無を確認します。対象テナント・期間・機能(Outlook/OWA/Loop/Teams等)を把握します。
  • 高秘匿グループの即時リスク低減
    • 高秘匿部門・法務・経営層アカウントから、Copilot for Microsoft 365 ライセンス(あるいは当該要約機能)を一時的に外す運用を検討します。全社停止ではなく“リスクベースのリング制御”が現実的です。
  • 監査ログのスコーピング
    • 影響が疑われる期間(報道では“数週間”)における、AI要約機能の利用記録が取得・検索可能かを棚卸します。もしAI利用が独立イベントとして出力されない場合、代替シグナル(Graph APIのMail.Read委任、異常な短時間閲覧パターン等)で近似推定できるかを検討します。

中期(2–6週間)

  • “AIパイプラインに伝播するDLP/ラベル”の健全性テスト
    • テスト用の秘匿ラベル(例:機微+転送禁止)を付与したメールで、UI閲覧・検索・共有・AI要約それぞれの経路におけるブロック/マスキング挙動を検証します。取得段(RAG)・生成段(要約)・提示段(表示)の三層で期待通りの抑止が働くかを確認します。
  • 監査・可視化の整備
    • 「AIによる取得・要約・提示」を監査イベントとして捕捉できるか、既存SIEMで相関可能かを評価し、不足があればログスキーマの拡張やベンダーへの改善要求を明文化します。
  • キルスイッチ運用の標準化
    • ライセンス付け外し/機能フラグの切替え/アプリ別ポリシーの3経路で停止できる運用手順書(RBAC、実行権限、所要時間、影響範囲)を整備し、年2回の演習に組み込みます。

長期(四半期スパン)

  • AI版ゼロトラスト・アーキテクチャの制度化
    • 取得段ABACの強制、ラベル連動のポリシー評価、提示段の二重抑止(秘匿語彙のサプレッションや自動マスキング)、プロンプトファイアウォール/モデルガバナンスを“製品横断で”標準化します。
  • データ分割と既定無効化
    • 「高秘匿メールドメイン(人事・M&A・法務など)」は、原則としてAI要約を既定無効化。例外はケース申請・審査・期限付き許可とし、審査ログを残します。
  • DPIA/委託契約・法的評価の更新
    • ベンダーからRCAと恒久対策を取得し、DPIA(データ保護影響評価)・委託契約(データ処理条件)・インシデント通知基準を更新します。規制業種は、社内のプライバシー/法務チームと連携し、報告義務の要否(影響の実質性)を事実ベースで再評価します。
  • レッドチーム演習(AI特化)
    • インサイダー視点で「要約による抽象化流出」「プロンプト注入による取得範囲拡張」を想定した演習を実施し、抑止・検知・対応の欠落点を継続的に補強します。

参考情報

  • TechCrunch: Microsoft says Office bug exposed customers’ confidential emails to Copilot AI(2026-02-18)
    https://techcrunch.com/2026/02/18/microsoft-says-office-bug-exposed-customers-confidential-emails-to-copilot-ai/

本件は、短期の“火消し”を超えて、AI時代のデータ保護をどう設計原則として織り込むかが問われています。大切なのは、DLPやラベルをただ“信じる”のではなく、AIパイプラインの各段で“効いていること”を自分たちのテストで確かめ、効かない段には新しい抑止と可視化を重ねることです。AI活用の推進と安全の両立は、設計と運用の積み重ねでしか実現しません。今回の学びを、自社の標準に落とし込む好機と捉えたいところです。

背景情報

  • i Copilot AIは、Microsoft 365の一部として提供されるAI機能であり、ユーザーがWordやExcelなどのアプリケーションで利用できるチャット機能を提供します。このバグにより、機密ラベルが付けられたメールが誤って処理され、AIがその内容を要約することが可能になりました。
  • i Microsoftは、バグの修正を2月の初めに開始したと述べていますが、具体的な影響を受けた顧客の数については情報を公開していません。