OpenClawがVirusTotalスキャンを統合し悪意のあるClawHubスキルを検出
OpenClawは、Googleが所有するVirusTotalと提携し、ClawHubにアップロードされるスキルをスキャンすることを発表しました。この取り組みは、エージェントエコシステムのセキュリティを強化するためのものです。すべてのスキルは、VirusTotalの脅威インテリジェンスを使用してスキャンされ、悪意のあるスキルはダウンロードをブロックされます。しかし、OpenClawはVirusTotalスキャンが万能ではないことを警告しており、巧妙に隠された悪意のあるスキルが見逃される可能性があるとしています。さらに、OpenClawは、セキュリティモデルや報告プロセスの公開を予定しており、最近の報告ではClawHubに数百の悪意のあるスキルが存在することが明らかになっています。
メトリクス
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予想外またはユニーク度
脅威に備える準備が必要な期間が時間的にどれだけ近いか
このニュースで行動が起きる/起こすべき度合い
主なポイント
- ✓ OpenClawは、VirusTotalと提携し、ClawHubにアップロードされるスキルをスキャンする機能を追加しました。
- ✓ 悪意のあるスキルはダウンロードをブロックされ、すべてのスキルは毎日再スキャンされます。
社会的影響
- ! AIエージェントの普及により、企業のデータセキュリティが脅かされる可能性があります。
- ! 悪意のあるスキルが広がることで、個人情報の漏洩やデータ損失のリスクが高まります。
編集長の意見
解説
OpenClaw×VirusTotal連携でClawHubの悪性スキルを自動ブロック──AIエージェントのサプライチェーン防御が実装段階に入りました
今日の深掘りポイント
- スキル配布の「市場(マーケットプレイス)」を入口でスキャンし、悪性スキルのダウンロード自体を止める意思決定が示すのは、AIエージェントのサプライチェーン対策が“理念”から“運用”へ移ったことです。
- VirusTotal連携は広域インテリジェンスを活かす実務解ですが、AIスキル特有の遅延ローディングや外部取得型ペイロードには死角が残るため、静的検査と動的・実行時防御の二段構えが前提になります。
- 再スキャン(毎日)とブロックの自動化は、企業側の審査負荷を軽減しつつ、地域横断のコンプライアンス実装(EU/USのAI安全指針への適合設計)を後押しします。
- 「数百件規模の悪性スキル」や「約7.1%の重大欠陥」という示唆は、すでにAIスキル市場が“量的普及→質的淘汰”フェーズに入り、発見のパイプライン整備が喫緊であることを示します。
- 現場でのポイントは、スキャン任せではなく、許可リスト運用、ネットワーク・トークンの最小化、実行時監視、撤去(kill switch)の4点セットを中核のコントロールに据えることです。
はじめに
AIエージェントは、メールやドキュメント、コードリポジトリ、SaaSに横断的に触れる“総合職”になりつつあります。そこに拡張機能としての「スキル」を取り込む設計は、利便の跳躍と同時に、供給網(スキル配布〜更新〜実行)を起点とする侵害の面積を一気に広げます。今回のOpenClawによるVirusTotalスキャン統合は、その拡大した面積を入口で削る現実的な一手です。万能ではないと自ら認めたうえで、透明性(セキュリティモデル・報告プロセスの公開)を予告した点も、エコシステムとして成熟に向かう兆しに見えます。市場の安全は“誰か一者”ではなく“組み合わせ”で生まれるからです。
深掘り詳細
事実関係(何が起きたか)
- OpenClawは、スキル配布プラットフォーム「ClawHub」にアップロードされる全スキルを、Google傘下のVirusTotalでスキャンし、悪性判定でダウンロードをブロックする取り組みを公表しました。加えて、スキルは毎日再スキャンされます。
- ただし、このスキャンは万能ではないとOpenClawは注意喚起しており、巧妙に隠された悪性スキルは見逃され得るとしています。
- OpenClawはセキュリティモデルや報告プロセスの公開も予告しており、最新の報道ではClawHubに「数百」の悪性スキルが存在したこと、また別の分析でスキルの約7.1%が重大欠陥を含むと示唆されています。
- 出典: The Hacker News
編集部のインサイト(なぜ重要か)
- 入口ブロッキングの“既視感”は強みです。ソフトウェア供給網では、コード署名・AV/URLレピュテーション・サンドボックス・ストア審査といった定番の重ね掛けでリスクを減衰させてきました。今回のVirusTotal連携は、AIスキル市場にその歴史を持ち込む動きで、運用導入のハードルを現実的に下げます。
- 一方で、AIスキルは「マニフェストは無害、実行時に外部からロジック/データを引く」など、静的スキャン泣かせの分離構造を取りやすいです。日次再スキャンは“時間差検知”を期待できますが、ペイロードの遅延取得や条件分岐(環境指紋で検知回避)には弱く、実行時制御が不可欠です。
- 「数百件の悪性」「約7.1%の重大欠陥」というオーダーは、すでに“発見-隔離-連絡-除去”の標準運用手順(SOPlaybook)と、テレメトリ可視化を要求する段階にあることを示します。現場では、採用スキル数の増加に比例して、封じ込め(containment)の迅速さがセキュリティ体験を左右します。
- 規制適合の観点でも、第三者スキャン・透明性・事後是正の仕組み化は、地域をまたぐ実務対応の共通分母になります。今回のような“入口の自動化+継続スキャン”は、企業側の取り込み設計を加速させるはずです。
脅威シナリオと影響
以下は仮説ベースのシナリオですが、AIスキル市場の性質と既存の攻撃手法から十分に想定できる筋書きです。MITRE ATT&CKの戦術・テクニックに沿って整理します(IDは代表例です)。
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シナリオ1:スキル経由の初期侵入とデータ持ち出し
仮説: 開発者アカウントが侵害され、正規スキルに悪性更新が混入。ユーザーがアップデートを取得すると、外部C2への通信と機密データ送信が発生します。
該当する主なテクニック:- Initial Access: Supply Chain Compromise(T1195)
- Execution: Command and Scripting Interpreter(T1059)
- Defense Evasion: Obfuscated/Compressed Files and Information(T1027)
- Exfiltration: Exfiltration Over Web Service(T1567)、Exfiltration Over C2 Channel(T1041)
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シナリオ2:資格情報の窃取と横展開
仮説: スキルが保存トークンや環境変数を走査し、SaaS/APIキーを取得。別SaaSや内部APIへ水平移動を試みます。
該当する主なテクニック:- Credential Access: Unsecured Credentials(T1552)、Credentials from Password Stores(T1555)
- Discovery: System Information Discovery(T1082)、Query Registry(T1012)
- Lateral Movement/Impact: Valid Accounts(T1078)
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シナリオ3:検知回避のための“遅延・条件付き”挙動
仮説: スキルはサンドボックスや既知スキャナ環境を検出すると無害挙動を装い、実利用時のみ暗号化ペイロードを外部取得して実行します。
該当する主なテクニック:- Defense Evasion: Virtualization/Sandbox Evasion(T1497)、Deobfuscate/Decode Files or Information(T1140)
- Command and Control: Ingress Tool Transfer(T1105)
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影響評価の視点
- 機密データ曝露の波及範囲は、“スキルが触れるSaaS・データソースの数×権限の広さ”で指数的に膨らみます。許可リストとスコープ最小化ができていない環境ほど、1スキルの不正が組織全体に広がりやすいです。
- 発見の遅れは、AIエージェントが自動・反復実行する性質により、被害速度を加速させます。入口でのブロックと、実行時の即時隔離(kill switch)が重要です。
メトリクスからの総合所見(編集部)
- 本件は、即時の運用適用が可能で、意思決定に移しやすい施策です。一方で、新規性は“既存のAV/レピュテーションのAI市場版”に近く、万能感を期待すべきではありません。
- 実装成功の鍵は「検知の網を増やす」ではなく、「検知後の封じ込めと権限最小化が常に効く状態」を作ることです。スキャンはゲートの一つ、守りの本丸は実行時の制御と撤去の速さにあります。
セキュリティ担当者のアクション
今日から着手でき、かつ継続的な強化につながる実務ポイントを優先度順で整理します。
- ポリシーと購買プロセスの整備
- スキル導入は「承認フロー必須」「許可リスト掲載のみ利用可」を原則化します。影響範囲(触れるSaaS・データ)の事前申告と、最小特権の同意を条件にします。
- 二段スキャンと実行時の二重化
- マーケット側スキャン(VirusTotal)に加え、社内側の静的/動的解析を並走させます。静的はコード・依存関係・外部通信先の抽出、動的はサンドボックスでの振る舞い観測を標準化します。
- ネットワークとシークレットの最小権限
- スキルごとにネットワーク・ドメイン許可リストを設定し、外向き通信は原則ブロックの上で必要先のみ許可します。
- APIキー/トークンはスコープ・有効期限を絞り、実行時に短期発行(ephemeral)し、使用後に失効させます。環境変数の平文格納は禁止します。
- 実行時監視とKill Switch
- スキルごとに挙動ベースのアラート(異常な外部送信量、新規ドメイン、権限外API呼び出し)を仕込みます。異常時は自動無効化・配信停止・巻き戻し(前バージョンへロールバック)を即時に行える設計にします。
- 透明性と追跡可能性
- スキルSBOM(依存ライブラリ・外部エンドポイント・権限要求)を収集・保管します。更新時の差分とリスク評点を通知する仕組みを用意します。
- サプライヤ保証とアカウント防御
- スキル開発者には二要素認証、署名付きリリース、改ざん監視を求めます。開発者アカウント乗っ取りはサプライチェーン侵害の最短経路です。
- 内部テレメトリの計測(運用KPI)
- 例: 悪性/不審スキルの隔離までの平均時間(MTTC)、許可リスト外インストール率、外向き通信のブロック率、検知後の完全除去までの時間(MTTR)。
- これらのKPIを週次で可視化し、再発防止のプランニングに直結させます。
- 教育とシャドーAI抑止
- 現場への短時間トレーニングで「スキルは便利でも外部コードである」という認識を徹底します。自己導入を防ぐため、申請〜承認〜導入のSLAを明示し、正規ルートの方が速い体験を設計します。
- フェイルセーフとしてのデータ境界
- 重要データは別境界で保護し、エージェント/スキルからの直接到達を段階的に制限します。RAGやファイル入出力は監査可能な中間層を介す設計にします。
- 監査ログとインシデント連絡の標準化
- スキルの取得元、ハッシュ、バージョン、権限、外部通信履歴を長期保存します。悪性検知時の通報先・連絡テンプレート・顧客告知基準を事前合意しておきます。
最後に。今回の取り組みは、即効性と実行可能性の高さが魅力です。一方で、AIスキルの実行パスは巧妙で、静的スキャンをすり抜ける余地が常にあります。だからこそ、「入口で削る」「中で見張る」「異常なら即切る」という三拍子を、道具と手順の両面から同時に磨くことが、企業のAI運用における“壊れにくさ”を生みます。今日の一手を、明日の常道に育てていきたいところです。
参考情報
- The Hacker News: OpenClaw Integrates VirusTotal Scanning to Detect Malicious ClawHub Skills(2026-02-08)https://thehackernews.com/2026/02/openclaw-integrates-virustotal-scanning.html
背景情報
- i OpenClawは、AIエージェントの機能を拡張するスキルを提供するプラットフォームです。これにより、ユーザーはさまざまなタスクを自動化できますが、悪意のあるスキルが混入するリスクも高まります。
- i VirusTotalは、ファイルやURLをスキャンして脅威を特定するサービスです。OpenClawは、VirusTotalの脅威インテリジェンスを活用して、スキルの安全性を確保しようとしています。