Palo Alto製品における悪意のあるトラフィックの急増
Palo Alto NetworksのGlobalProtectポータルに対する悪意のあるトラフィックが、24時間で約40倍に急増し、90日間での最高値に達しました。この急増は、特定のネットワークからのもので、過去の攻撃者による活動と関連している可能性があります。セキュリティ専門家は、これが新たな脆弱性の公開前の兆候であると警告しています。Palo Altoは、現在のところ新たなアドバイザリーを発表していませんが、セキュリティチームは警戒を強める必要があります。
メトリクス
このニュースのスケール度合い
インパクト
予想外またはユニーク度
脅威に備える準備が必要な期間が時間的にどれだけ近いか
このニュースで行動が起きる/起こすべき度合い
主なポイント
- ✓ Palo Alto NetworksのGlobalProtectポータルに対する悪意のあるトラフィックが急増し、セキュリティチームが警戒を強めています。
- ✓ このトラフィックの急増は、過去の攻撃者による活動と関連している可能性が高いとされています。
社会的影響
- ! 企業のセキュリティ体制に対する信頼が揺らぐ可能性があります。
- ! 悪意のあるトラフィックの急増は、リモートワーク環境におけるセキュリティリスクを高める要因となります。
編集長の意見
解説
GlobalProtectポータル向け悪性トラフィックが24時間で約40倍——ゼロデイ前兆と“作戦級”初期侵入に備えるべき局面です
今日の深掘りポイント
- 24時間で約40倍、90日間での最高水準という急激なスパイクは、単なるボットノイズではなく「事前探索(pre-disclosure scanning)」のシグナルである可能性が高いです。特定AS/国に収斂している点も計画性を示唆します。
- 標的は一般的な“VPN”ではなく、認証・SAML連携・クライアント分布といった企業の“アクセス中枢”を担うGlobalProtectポータルであり、侵入後の横展開や恒常的なアクセス維持に直結します。
- 官民での普及度が極めて高い初期侵入口のため、個別企業のリスクを超えて、サプライチェーンや広域踏み台化の懸念が現実化しやすいです。
- 当面の優先度は「露出面の即時縮小」「DoS/スキャン耐性の強化」「逸脱検知の閾値・クエリ更新」「想定ゼロデイに備えた行動計画(feature kill switch/段階的閉塞)」の4点です。
- メトリクスは“確度・即時性・行動可能性”が高い状況を示しており、SOCの監視ルールと境界ポリシーを48時間以内にアップデートすべきフェーズです。
はじめに
Palo Alto NetworksのGlobalProtectポータルに対する悪意のあるトラフィックが、24時間で約40倍に急増し、ここ90日間での最高水準に達しています。観測は特定のネットワークに偏っており、過去に悪用活動が関連づけられたアクターとの連続性が示唆されています。現時点でPalo Altoから新たなアドバイザリは出ていませんが、セキュリティコミュニティではゼロデイ開示前の事前探索段階である可能性に注意喚起が出ています。The Registerの報道が一次報道として本件を取り上げています。
本稿では、事実関係を整理しつつ、攻撃者の意図・技術的文脈・運用上の優先アクションを掘り下げます。なお、未公表情報については仮説であることを明示します。
深掘り詳細
事実(確認できていること)
- GlobalProtectポータル宛の悪性トラフィックが24時間で約40倍に急増し、90日間のピークに達しています。関連観測では11月14日に約230万セッションという高水準が報告されています(観測ソースの集計に基づく数値です)。
- トラフィックは主に特定のネットワーク群から発しており、地理的にはドイツとカナダ由来が目立つという分析があります。これらのネットワークは過去の攻撃活動と関連している可能性が指摘されています。
- Palo Alto Networksは本件に関する新規アドバイザリを現時点で公表していません。セキュリティ専門家は開示前の事前探索・脆弱性検証フェーズの兆候とみて警戒を呼びかけています。
- 上記の状況は、セキュリティ観測会社の外形トラフィック分析に基づくもので、企業環境での実被害や侵入成功の確証とは別位相の指標です。
- 出典: The Register(GreyNoiseなどの観測に基づく報道です)。
インサイト(編集部の読み筋/仮説)
- スパイクの形状と発信元の集中は、無差別のクローラではなく「版数・機能・設定差を識別するための能動的スキャン(T1595: Active Scanning)」のシグナルに見えます。とくにGlobalProtectはバージョンや構成(SAML連携、有効化機能、ポータル/ゲートウェイの分離有無など)で振る舞いが変わるため、指紋採取の価値が高いです。
- 目的は大きく二つに分かれると見ます。第一に、未公開脆弱性の事前検証と、攻撃対象の優先順位付け(影響バージョンの特定)です。第二に、既存の弱い設定(脆弱TLS、不要な機能、MFA未導入、露出した管理プレーン等)を持つ個体の収集です。
- 11月中旬にピークを付け、以降も観測が継続している構図は、「作戦級の初期侵入面(広域に普及・高価値・代替困難)に対する連鎖攻撃の起点確保」という意図と整合的です。地政学的緊張が高まる局面では、認証基盤とリモートアクセス装置は優先的に“前線化”します。
- 重要なのは、GlobalProtectポータルはしばしば「社内への正面玄関+認証ハブ」として機能している点です。ここを突破されると、SAML/IdP、AD、業務SaaSへの信頼連鎖に波及しやすく、単一機器の侵害が組織全体の恒常的なアクセス喪失や資格情報連鎖漏えいに直結します。
- メトリクス上も、緊急対応が正当化される“即時性・実行可能性・確度”のバランスにあり、いまは「観測重視の待機」ではなく「予防的に露出を減らし、アラートを先鋭化する」局面だと評価します。
脅威シナリオと影響
以下はMITRE ATT&CKに沿った仮説シナリオです。未公開の技術詳細があるため、あくまでリスク想定として提示します。
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シナリオA:未公開(または限定公開)脆弱性を用いた初期侵入
- Recon/準備: T1595 Active Scanning(バージョン・機能の指紋採取)
- 初期侵入: T1190 Exploit Public-Facing Application(GlobalProtectポータル/ゲートウェイの前認証バグ等)
- 横展開準備: T1078 Valid Accounts(資格情報収集/セッションハイジャック)、T1550 Use of Web Tokens(SAML/クッキー悪用の仮説)
- 永続化/横展開: T1133 External Remote Services(正規VPN経由の恒常アクセス化)、T1021 Remote Services(RDP/SMB/SSH等)
- 目的: 情報窃取(T1041 Exfiltration Over C2 Channel)または業務妨害(T1486 Data Encrypted for Impact)
- 影響: 認証連鎖の汚染により、社内外SaaS・IdP・ADへの波及、復旧に長時間を要する可能性があります。
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シナリオB:大規模な認証試行と機能悪用の組み合わせ
- Recon/準備: T1595 Active Scanning(MFA有無・応答差異の識別)
- 初期侵入: T1110 Brute Force / Password Spraying(レート分散/地理分散)
- 横展開: T1078 Valid Accounts(VPNからの正規経路利用)、T1087 Account Discovery(内部資格情報探索)
- 影響: 監査ログに残りにくい“正規ユーザの挙動”に偽装されやすく、検知遅延が生じます。
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シナリオC:可用性低下を伴う攪乱と、陰に隠れた選別攻撃
- 攪乱: Zone/DoS資源の枯渇(ポータルへの大量接続で運用を揺さぶる)
- その裏での選別: スキャン応答に基づき、脆弱個体を限定的に侵害(T1190)
- 影響: 可用性インシデント対応にSOC/ネットワーク運用が吸われ、侵入検知の初動が遅れる可能性があります。
現時点の最大リスクは、事前探索を経た“短時間の一斉悪用”です。露出面を縮小し、攻撃者の選別対象から外れることが、実害回避の最短ルートです。
セキュリティ担当者のアクション
時間軸と優先度で整理します。環境やビジネス制約に合わせ、段階的に実施してください。
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直ちに(24〜48時間)
- 露出面の最小化
- グローバルに公開中のGlobalProtectポータル/ゲートウェイを棚卸しし、不要な公開拠点を閉塞します。
- 可能であれば宛先IP制限(許可リスト方式)やGeoIP/ASNベースの制限を適用します。海外出張・委託先の要件は一時的にVPN上流の踏み台経由に絞る選択肢も有効です。
- 可用性と耐性の強化
- UntrustゾーンにZone/DoS保護プロファイルを適用し、SYN/UDP flood耐性と同時接続の上限管理を有効化します。誤検知に留意し、段階的にしきい値を上げます。
- 検知とハンティングの強化
- 直近14〜30日のログから、国別・ASN別のアクセス偏在、User-Agentの異常、HTTPステータスの比率変化(4xx/5xx増)、失敗認証の急増を可視化します。
- ベースライン比での“急峻な増分”にアラートを付け、IP/ASN単位のブロックと相関ルール(短時間・多宛先)を暫定運用します。
- 認証の堅牢化
- 全アカウントにMFAを強制し、特権・非常勤・サービスアカウントの利用可否とアクセス許可時間帯を見直します。
- 利用していない機能(Clientless VPN、古い暗号スイート、レガシープロトコル等)を停止します。
- 露出面の最小化
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短期(1〜2週間)
- パッチと構成の健全化
- PAN-OSの推奨安定版へ更新し、踏み台となりやすい周辺機能(不要なポータル分散、古いクライアント互換設定)を整理します。
- 管理プレーンとデータプレーンの分離、管理UIの外部非公開、証明書・TLS1.2/1.3の強制、不要なサイファの無効化を徹底します。
- 継続監視とシグマ/ルール整備
- “1日当たりの失敗認証×AS”や“国別の新規クライアント比率”、“User-Agent多様性指数”など、ベースライン化しやすい指標でしきい値アラートを定義します。
- SIEMに「GlobalProtectポータル関連イベント」の専用ダッシュボードを設け、ゼロデイ公表時に即応できるタイル(バージョン別、認証方式別、地理別)を用意します。
- パッチと構成の健全化
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中期(1〜3か月)
- アーキテクチャの再設計
- 高感度資産へのアクセスは、機器単体の境界信頼から脱却し、デバイス健全性・リスクスコア・行動連続性を合わせたゼロトラスト制御に段階移行します。
- SAMLトークン/クッキーの保全策(短寿命化、バインディング、継続認証)を検討し、資格情報連鎖の破断点を明確にします。
- レッドチーム/机上演習
- 「GlobalProtectコンポーネントへのゼロデイが出た」という前提で、封じ込め・代替経路・ビジネス継続の演習を行い、kill switchとメッセージング手順を確立します。
- アーキテクチャの再設計
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侵害疑い時の即応チェック(抜粋)
- 直近の管理者アカウント作成/権限変更、未知の設定変更/コミット履歴、異常な“外→内”トンネル確立、急増したデータ転送量や不審な宛先を確認します。
- 認証基盤(IdP/AD)の監査ログと突合し、トークン再発行、証明書再配布、パスワードリセットの順序を定義します。
参考情報
- The Register: Palo Alto製品に対するトラフィック急増の報道(2025-11-20): https://go.theregister.com/feed/www.theregister.com/2025/11/20/palo_alto_traffic_flood/
注記
- 本稿は、公開情報と観測に基づく編集部の分析と仮説を含みます。未公開の脆弱性有無や技術詳細は確定ではないため、最新のベンダーアドバイザリを継続確認しつつ、予防的な縮退運用と監視強化を優先することを推奨します。
背景情報
- i Palo Alto NetworksのGlobalProtectは、企業向けのVPNソリューションであり、リモートアクセスを提供します。最近、特定のエンドポイントに対する悪意のあるトラフィックが急増しており、これは過去の攻撃者による活動と関連していると考えられています。
- i GreyNoiseによると、悪意のあるトラフィックは主にドイツとカナダから発信されており、特定のネットワークからのものであることが確認されています。このようなトラフィックの急増は、過去のVPN関連のインシデントに先立って観察されてきたパターンと一致しています。