2026-02-14

QRコードを悪用したフィッシング攻撃の現状

本記事では、QRコードがどのように悪用されているかについて詳しく解説しています。QRコードを利用したフィッシング攻撃(クイッシング)や、悪意のあるアプリへの誘導、URL短縮サービスを利用した攻撃手法が紹介されています。特に、QRコードの普及により、ユーザーが無警戒にスキャンすることが多くなり、攻撃者が個人のモバイルデバイスのセキュリティを回避する手段として利用されていることが強調されています。日々11,000件以上の悪意のあるQRコードが検出されており、特に金融サービス業界が大きな影響を受けています。

メトリクス

このニュースのスケール度合い

7.5 /10

インパクト

6.5 /10

予想外またはユニーク度

6.5 /10

脅威に備える準備が必要な期間が時間的にどれだけ近いか

7.5 /10

このニュースで行動が起きる/起こすべき度合い

8.0 /10

主なポイント

  • QRコードを利用したフィッシング攻撃が増加しており、特にURL短縮サービスを利用した手法が目立っています。
  • 攻撃者は、QRコードを通じて個人のアプリにアクセスし、アカウント情報を盗む手法を用いています。

社会的影響

  • ! QRコードの普及により、一般の人々が無警戒にQRコードをスキャンすることが増え、フィッシング攻撃のリスクが高まっています。
  • ! 特に金融サービス業界が攻撃のターゲットとなっており、顧客の信頼を損なう可能性があります。

編集長の意見

QRコードを利用したフィッシング攻撃は、近年急速に増加しています。特に、QRコード短縮サービスを利用することで、攻撃者は悪意のあるリンクを隠し、ユーザーを騙す手法が進化しています。これにより、ユーザーはリンクの最終的な行き先を確認できず、無警戒にスキャンしてしまうことが多くなっています。QRコードは、特にコロナ禍において接触を避ける手段として普及したため、日常生活において非常に身近な存在となっています。このため、ユーザーの警戒心が薄れ、攻撃者にとっては格好のターゲットとなっています。さらに、QRコードを利用した攻撃は、特定のアプリに対するフィッシング攻撃にも利用されており、特に金融サービス業界が大きな影響を受けています。今後、QRコードを利用した攻撃がさらに増加することが予想されるため、企業や個人はQRコードをスキャンする際に十分な注意を払う必要があります。また、企業はQRコードの安全性を確保するために、セキュリティ対策を強化することが求められます。具体的には、QRコードをスキャンする前に、リンク先を確認する習慣をつけることや、QRコードを利用する際には信頼できるソースからのものであることを確認することが重要です。さらに、セキュリティソリューションを導入し、QRコードのリスクを軽減するための対策を講じることが必要です。

解説

悪性QRコードがモバイル境界を破る——短縮URL・ディープリンク・APKの三段跳びで拡散する「クイッシング」の現在地です

今日の深掘りポイント

  • 物理空間からモバイル、そしてクラウドへ抜ける攻撃導線は、従来のメール・Web検査の外側で成立しやすいです。ここが最大のブラインドスポットです。
  • 攻撃者は「短縮URL → アプリ内ディープリンク → APK直配布」を連鎖させ、リンク確認とモバイル制御の両方をすり抜けます。ワンクッションずつ審査の目を外す発想です。
  • 可視化のカギは「QR起点の解析(展開・最終FQDN解決・プロファイリング)」と「モバイル流量の検査経路化(MTD/MAM+SWG/Per‑App VPN)」です。
  • 認証は「フィッシング耐性(FIDO2/パスキー)」へ引き上げない限り、AiTM経由でセッションを奪われ続けます。
  • 金融はもちろん、選挙・公共サービス・小売など物理掲示が多い業態ほどリスクが面で広がります。現場運用(掲示物・印刷)の統制がセキュリティの一部になります。
  • 現場KPIは「不明出所QRからの遷移率」「短縮URL連鎖の深さ・最終ドメイン新規度」「未知ソースからのAPKインストール試行数」で見ると打ち手の効果が測れます。

はじめに

QRコードは「非接触で速い」という価値が支持され、日常のUXになりました。結果として「スキャンは無害」という思い込みが広がり、攻撃者にとっては境界を越える理想的な踏み台になりました。Palo Alto Networks Unit 42は、短縮URLやアプリ内ディープリンク、APK直配布を組み合わせた悪性QRコードの横行を報告し、日々1.1万件超の悪性QRコードが検出されていると述べています。特に金融業界の被害が目立ちます[出典: Unit 42]です。
このテーマは、発生確度と信頼性が高く、現場で即実装できる対策の幅も広い一方で、ユーザ行動の変容が必要になるため「楽観要素は少ない」領域です。経営判断としても優先度は高く、モバイルと物理運用を跨ぐ体制設計が問われます。

参考: Unit 42 – QR Codes as an Attack Vector

深掘り詳細

事実整理:観測されているTTPと被害相

  • 悪性QRコードの検出は日次で1.1万件超に達し、金融サービスが主要ターゲットになっています[Unit 42]です。
  • 典型的な連鎖は以下です。
    • 短縮URLで行き先を隠蔽(解決先は頻繁に差し替え可能)です。
    • ディープリンク(例: intentスキーム、アプリ固有スキーム)で既存アプリを開かせ、正規UIに近い文脈で認証や支払いを促します。
    • APK直配布や権限要求(通知アクセス、他アプリ上描画)でオーバーレイ型フィッシングやワンタイムコード窃取に進みます。
  • 物理世界の貼付物(店舗の決済、駐車・公共料金、案内ポスター)やデジタル上の画像(メール・SNS・メッセージアプリに添付されたQR)を起点に、モバイルでリンクが開かれるため、企業のメールゲートウェイ・PC EDR・社内プロキシの“視界外”で事象が完結しやすいです。

出典: Unit 42 – QR Codes as an Attack Vector

インサイト:検知が抜ける「物理→モバイル→クラウド」の断面

  • 端末のカメラ→ブラウザ(またはアプリ)という経路は、企業のネットワーク境界やメール防御をバイパスします。BYOD端末ではMDM/MTDの統制が及ばず、企業からはDNS/HTTPの可視性も得にくいです。
  • 短縮URLは「遷移の多段化」と「リダイレクト先の動的差し替え」を提供します。組織側が1度ブロックしても、攻撃者は終点だけを差し替えて回避できます。
  • ディープリンク検証(Android App Links、iOS Universal Links)の未整備や、カスタムURLスキームの氾濫は、リンクの乗っ取りや意図しないアプリ起動を許します。これが「正規アプリの文脈で入力を促す」錯視を生み、認証情報と本人確認フローを同時に突破しやすくします。
  • 認証がTOTPやSMSのままだと、AiTMプロキシやオーバーレイでセッション・コードが奪取されます。デバイス紐付けの強いFIDO2/パスキーへの移行が遅れている領域ほど、被害の再発性が高いです。

脅威シナリオと影響

以下は想定シナリオ(仮説)と、MITRE ATT&CKに沿った位置付けです。実環境に合わせてテーブルトップ演習に落とし込むことをおすすめします。

  • シナリオ1:店舗・支払い現場のQR差し替えで銀行認証を奪取です

    • 手口: 決済や割引案内のQRが短縮URLに誘導し、正規風のログインページかディープリンクで銀行アプリを起動して認証・ワンタイムコードを要求します。AiTMでセッションCookieも窃取します。
    • 影響: アカウント乗っ取り、送金・受取人追加、個人情報流出です。
    • ATT&CK(例):
      • 初期侵入: Phishing(Spearphishing Link)です。
      • 実行: User Execution(リンク開封/アプリ起動)です。
      • 処理逃れ: 正規クラウド/短縮URLの悪用、難読化です。
      • 認証情報アクセス: Webフォームでの入力収集、AiTMによるセッション乗っ取り(Steal Web Session Cookie)です。
      • C2/流出: HTTPSのWebプロトコルで送信です。
  • シナリオ2:社内ポスターのQRで「セキュリティ更新」を装いAPK sideloadへです

    • 手口: オフィス掲示/配布物のQRから「社内セキュリティ更新」ページを装いAPKを配布、通知アクセスやオーバーレイ権限を要求します。
    • 影響: 社用/業務アプリ上でのオーバーレイ・認証情報窃取、メール・チャット経由の社内拡散です。
    • ATT&CK(例):
      • 初期侵入: Phishing(QRリンク)です。
      • 実行/永続化: 不正アプリ導入、起動時自動実行、権限濫用です。
      • 認証情報アクセス: 入力キャプチャ/オーバーレイです。
      • 横展開/拡散: 連絡先・メッセージの悪用で社内ソーシャル拡散です。
  • シナリオ3:公共案内のQRでeKYC/税手続を装う広域詐取です

    • 手口: 行政手続や選挙関連の案内を装い、個人情報・本人確認書類のアップロードと決済を要求します。
    • 影響: 大量の個人情報流出、口座開設/融資/決済の不正利用、信頼失墜による二次被害です。
    • ATT&CK(例):
      • 偵察/準備: 被害者組織・地域情報の収集、ブランド模倣用インフラ調達です。
      • 初期侵入~流出: 上記と同様にWebフォーム収集とHTTPS流出です。

これらのシナリオは、ユーザが「QR=安全」という思い込みを持つ前提で高効率に成立します。現場では「掲示・配布物の真正性」「ディープリンクの検証」「MFAの耐フィッシング性」という3点の弱い鎖が連結していないかを点検すべきです。

セキュリティ担当者のアクション

実装容易なものからアーキテクチャ変更まで段階的に記します。優先度は各社の端末管理(BYOD/COPE)とクラウド活用状況に応じて調整してください。

  • QR起点を可視化・検査する仕組みを追加します

    • メール/チャット/チケットに添付された画像中のQRを自動デコードし、URL展開(短縮URLの多段解決)と動的分析を行います。
    • モバイル流量をSWG/クラウドプロキシへ通す経路を設けます(Per‑App VPNやモバイルエージェント)。HTTPS内でのリダイレクト連鎖や新規登録ドメイン(NRD)を高リスク判定します。
    • ブラウザ拡張やモバイル保護アプリで「QR由来の遷移である」フラグを付与し、ポリシー分岐(例: 警告/ブロック/隔離ブラウザ起動)を行います。
  • モバイル管理(MAM/MDM/MTD)をQR前提に再設計します

    • BYODはMAM優先で業務データをアプリ領域に閉じ込め、未知ソースからのAPKインストールを禁止します。
    • MTDでオーバーレイ権限要求・通知アクセスの濫用・ディープリンク悪用を検知し、リスクスコアに応じてアクセス制御(Conditional Access)に反映します。
    • ディープリンクの検証を強制します(Android App Links/iOS Universal Linksの整備、カスタムURLスキームの棚卸と最小化、業務アプリのインテント許可リスト化)です。
  • 認証と決済・本人確認フローを「耐フィッシング」化します

    • FIDO2/パスキーを標準にし、TOTP/SMSは高リスク操作やレガシー限定に段階的に縮退します。
    • AiTM対策として、デバイス/ネットワーク/クッキー継続性の信号を強化し、セッションのデバイス紐付け・リスクベース再認証・トランザクション署名(例: 金額・受取人を端末鍵で確認)を導入します。
    • 「QRでログイン/支払いを開始しない」原則を掲示・UI・約款・FAQの全接点で明文化します。QRは公式アプリ内で生成・読取するフローに限定します。
  • 物理運用の統制(セキュリティとブランド保全を接続)を行います

    • 店舗・支店・イベントの掲示物は改ざん防止(ホログラム/ナンバリング/耐改ざん素材)と定期点検ルーチンを運用に組み込みます。
    • 印刷物やデジタルサイネージのQRには、短縮URLを避け、公式FQDNと経路を明示します。差し替え検知のための監査用QR/透かしも検討します。
    • 「不審QRの通報→撤去→広報注意喚起」のプレイブックを現場に配布します。
  • 検知・ハンティングの具体指標を持ちます

    • 指標例:
      • 短縮URLを起点にした遷移で、最終FQDNが登録7日以内の割合です。
      • モバイル端末からの新規IdPセッションで、直前に多段リダイレクトが観測された割合です。
      • 未知ソースAPKのインストール試行・ブロック件数、オーバーレイ権限要求の発生比率です。
    • ルール例(仮説):
      • 画像添付メール内のQRから展開されたURLが、短縮→正規クラウドホスティング→ブランドなりすましの順で遷移するパターンを高リスクにします。
      • 1ユーザのMFA成功直後に別ASN・別UAから同一セッションが継続する挙動をAiTM疑いとして隔離します。
  • ユーザ教育は「行動置換」を設計します

    • 「不明QRはカメラで直接開かず、公式アプリから読み取る」「短縮URLの確認」「権限要求(通知・オーバーレイ)は一旦拒否」が三本柱です。
    • 現場向けには、改ざんQRの特徴(シール重ね・印刷品質不整合・短縮URL表示)と、発見時の対応(写真記録→撤去→本部報告)をカード化します。
  • インシデント対応の初動を定義します

    • 被害申告時の封じ込め(セッション無効化、受取人ロック、振込クーリング)、悪性QRの回収/撤去、周知、当局・決済事業者連携までを1枚の手順にします。
    • フォレンジックでは短縮URL連鎖の全解決と、終点のホスティング/証明書/登録者を追跡し、ブロックリストに反映します。

今回のスコア群が示唆するのは、発生確度と即応性が高い一方で、ポジティブな打ち手(ユーザに負担の少ない恒久策)が少ないという現実です。だからこそ、単発の注意喚起ではなく、認証・モバイル管理・掲示運用という“面”の防御で、リスクを恒常的に小さくする設計が肝になります。

参考情報:

  • Unit 42: QR Codes as an Attack Vector(短縮URL・ディープリンク・APK直配布の横行、日次1.1万件超の悪性QR検出): https://unit42.paloaltonetworks.com/qr-codes-as-attack-vector/

背景情報

  • i QRコードは、特にコロナ禍において接触を避ける手段として普及しましたが、その一方で攻撃者にとっても便利な攻撃ベクターとなっています。QRコードをスキャンすることで、ユーザーは悪意のあるリンクに誘導される危険性があります。
  • i QRコード短縮サービスは、攻撃者が悪意のあるリンクを隠すために利用されます。これにより、ユーザーは最終的なリンク先を確認できず、攻撃に気づかないまま被害に遭う可能性が高まります。