英国がオンライン公共サービスのセキュリティ強化計画を発表
英国政府は、オンライン公共サービスのセキュリティとレジリエンスを向上させるための新しい「政府サイバーアクションプラン」を発表しました。この計画には、2億1000万ポンド(約2億8300万ドル)の予算が割り当てられ、政府サイバーユニットの設立が含まれています。このユニットは、サイバーリスク管理ポリシーの策定や、公共部門へのサイバーセキュリティサービスの提供を行います。また、ソフトウェアセキュリティ大使制度も導入され、ソフトウェア供給チェーン攻撃への対策が強化される予定です。
メトリクス
このニュースのスケール度合い
インパクト
予想外またはユニーク度
脅威に備える準備が必要な期間が時間的にどれだけ近いか
このニュースで行動が起きる/起こすべき度合い
主なポイント
- ✓ 英国政府は、オンライン公共サービスのセキュリティを強化するために新たな計画を発表しました。
- ✓ この計画には、政府サイバーユニットの設立と2億1000万ポンドの予算が含まれています。
社会的影響
- ! 公共サービスのセキュリティ強化は、国民の信頼を高め、社会の安定に寄与します。
- ! サイバー攻撃によるサービスの中断は、社会的な混乱を引き起こす可能性があるため、対策が重要です。
編集長の意見
解説
英国、「政府サイバーアクションプラン」で公共オンラインサービスの底力を上げる—2.1億ポンド投下と統合ユニット新設で供給網防御を前進させます
今日の深掘りポイント
- 英国政府が公共オンラインサービスのセキュリティとレジリエンス強化に向け、2.1億ポンドを投じる新計画を発表しました。統合的な「政府サイバーユニット」を新設し、リスク管理ポリシー策定と公共部門へのセキュリティサービス提供を担わせます。
- 供給網対策の中核として「ソフトウェアセキュリティ大使」制度を導入します。各所管にセキュリティの“責任ある推進者”を立て、開発・調達・運用の縦割りを横断させる狙いが読めます。
- メッセージ性は強く、政策の実行確度も高い一方、現場に即座に新要件が降ってくる段階ではない見込みです。調達要件やベースラインがじわじわ引き上がると捉え、供給網可視化・署名・SBOMなど「準備して損のない標準」を前倒しで固めるのが得策です。
- 日本企業にとっては、英国向け公共案件や英国発のグローバル調達基準に波及する可能性が高く、ソフトウェア供給網の証跡と保証(署名、ビルド整合性、脆弱性開示対応)の整備が競争力の差になります。
参考: 発表を報じる公開記事(Help Net Security)に基づき整理しています。Help Net Security, 2026-01-07 です。
はじめに
公共サービスのデジタル化は、利便と同時に攻撃面を広げます。障害はただの止まり石ではなく、社会的信頼の毀損へ直結します。今回の英国の動きは、従来の“各省庁がベストプラクティスを守る”段階から、“中央で能力を用意し、実装まで伴走する”段階に踏み込む宣言に見えます。新しさも現実味も両立した打ち手で、ただちに全てが変わるわけではないものの、方向性は明確です。準備に先んじた組織が、来る調達・運用の新常態で優位に立てます。
深掘り詳細
事実関係(公開情報に基づく)
- 英国政府は、公共オンラインサービスのセキュリティとレジリエンス向上のため「政府サイバーアクションプラン」を発表しました。予算として2億1000万ポンドを確保します。Help Net Security です。
- 計画の柱として「政府サイバーユニット」を新設し、サイバーリスク管理ポリシーの策定と、公共部門へのセキュリティサービス提供を担います。同計画には、ソフトウェア供給チェーンの防御力を引き上げるための「ソフトウェアセキュリティ大使」制度導入が含まれます。Help Net Security です。
(上記は公開記事に記載の範囲に限って要点を抽出しています。)
編集部のインサイト(仮説・推測を含みます)
- 中央集権から“共通能力の提供”へシフトする兆しです。単なる基準公表ではなく、リスク管理ポリシーと現場サービスを束ねるユニット新設は、監督と実装の川上・川下を一体化する意図が読み取れます。運用の現実に踏み込める分、効果は出やすい一方で、調整コストと調達ガバナンスが鍵になります。
- 「ソフトウェアセキュリティ大使」は、組織の縦割りや調達・開発・運用の断絶を埋める“チェンジエージェント”的機能と推測します。SBOMの管理・流通、署名鎖の運用、パッケージ発見からパッチ配布までのリードタイム短縮など、実務の“最後の一押し”に効きます。
- 2.1億ポンドは巨額ではありませんが、共通基盤(アイデンティティ、ログ・脅威検知、脆弱性管理、コード署名・アーティファクト配布)の整備に重点投資すれば、規模の経済で費用対効果は高くなります。逆に、個別組織への薄く広い配分では効果が霞みます。
- 調達要件の引き上げは時間差で波及する可能性が高いです(推測)。SBOM提出、ビルドの再現可能性、SLSA等のビルド保証、署名・検証の徹底、脆弱性開示(CVD/VDP)対応などが、英国公共向けの“当たり前”になる方向へ収れんしていくでしょう。
- 地政学的リスクが高止まりする中、国家主体の関与が疑われる供給網侵害やアイデンティティ基盤の撹乱に焦点が当たるのは自然です。今回の計画は、その的に資源を集中させるための“受け皿”作りと位置づけられます。
脅威シナリオと影響
以下は、公共オンラインサービスを想定した仮説シナリオです。MITRE ATT&CKで代表的な手口に紐づけ、どこに効く対策かを見通せるよう整理します(模倣でなく理解のためのマッピングです)。
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シナリオ1:オープンソース依存関係の汚染を経由した供給網侵害
- 進行イメージ(仮説):
- 依存パッケージのタイポスクワッティングや悪性更新で侵入(Supply Chain Compromise: T1195、とりわけ T1195.001/002)。
- 信頼制御の迂回や不正署名で検証を潜り抜ける(Subvert Trust Controls: T1553、例:Code Signing T1553.002)。
- 既存の信頼関係を足がかりに他システムへ横展開(Trusted Relationship: T1199)。
- 影響: 広範なサービスに同時多発的な改ざん・バックドア混入のリスク。発見の遅れが長期の潜伏につながります。
- 進行イメージ(仮説):
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シナリオ2:政府系SSO/フェデレーションのトークン悪用による権限乗っ取り
- 進行イメージ(仮説):
- アプリケーショントークン窃取(Steal Application Access Token: T1528)や、SAMLトークン偽造(Forge Web Credentials: T1606.002)。
- 正規アカウントでの横移動・持続化(Valid Accounts: T1078)。
- クラウドリソースからのデータ持ち出し(Exfiltration Over Web Service: T1567)。
- 影響: 可用性だけでなく完全性・機密性の同時侵害。検知は行動分析頼みになりやすく、統合ログと相関分析の体力勝負になります。
- 進行イメージ(仮説):
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シナリオ3:市民向けポータルの可用性を狙う複合攻撃(脆弱性悪用+DDoS)
- 進行イメージ(仮説):
- 公開アプリの脆弱性を突く侵入(Exploit Public-Facing Application: T1190)。
- 同時にネットワーク/エンドポイントDoSを重ね、復旧妨害(Network DoS: T1498、Endpoint DoS: T1499)。
- 表層的な改ざんで信頼を揺さぶる(Defacement: T1491)。
- 影響: サービス停止と社会的混乱の誘発。復旧遅延や誤情報の拡散が付随し、広報・自治体窓口への負荷が跳ね上がります。
- 進行イメージ(仮説):
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シナリオ4:MSP/SI事業者経由の“逆流”侵害
- 進行イメージ(仮説):
- 管理対象の更新配布経路を汚染(Supply Chain Compromise: T1195)。
- 信頼済みチャネルから正規に見える操作で展開(Trusted Relationship: T1199)。
- 設定・ポリシーの意図的な改変(Data Manipulation: T1565)。
- 影響: 一社の侵害が多数の公共組織へ波及。第三者リスク管理(TPRM)の実効性が問われます。
- 進行イメージ(仮説):
MITRE ATT&CKの各テクニックは公式ドキュメントをご参照ください(T1195、T1553、T1199、T1498、T1499、T1491、T1606、T1528、T1565 など)。
セキュリティ担当者のアクション
“今すぐ全部を変える”必要はありませんが、「準備しておくと波が来た時に強い」ものから着手するのが賢明です。
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戦略・ガバナンス(CISO/リスク管理)
- 供給網保証の最低ラインを社内方針として明文化します(例:SBOM提出・保管、署名済みアーティファクト必須、ビルドの再現可能性/SLSA準拠レベルの目標設定)。将来の英国調達要件に合致する可能性が高い領域です(推測)。
- 第三者リスク管理(TPRM)を“質問票中心”から“証跡検証中心”へ転換します。署名検証の自動化やSBOMインジェストの運用を、紙の審査からシステム審査へ移します。
- サービス停止リスクに備え、重要オンラインサービスの「目標復旧時間(RTO)」「目標復旧点(RPO)」を再点検し、DDoS・WAF・フェイルオーバーのリハーサルを四半期ごとに行います。
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運用・検知(SOC/IR)
- 署名・信頼制御の逸脱検知をユースケース化します(新規コード署名証明書の出現、未知のレジストリ/リポジトリからの取得、検証失敗イベントなど)。
- アイデンティティ基盤の高度不正を想定した検知(SAML/OIDCイベントの相関、異常トークン使用、管理者境界を跨ぐふるまい検知)を強化します。ログの統合と保持期間の延伸を合わせて検討します。
- ソフトウェア更新チャネルの“入口”監視を整備します(未知のパッケージ名、タイポ類似名、異常な依存解決の挙動)。ビルド環境への外部到達面の縮小(ネットワーク分離、ワンウェイ導線)も効果的です。
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開発・プラットフォーム(DevSecOps/PSIRT)
- ビルド署名とアーティファクト検証をCI/CDに常時組み込み、プロダクションでの検証を“デフォルト拒否・例外許可”にします。
- SBOMの生成・配布・消費(自社・サプライヤ双方)を自動化し、脆弱性通知とリメディエーションSLAを紐づけます。広報・法務と連携したCVD/VDPの運用もセットで整えます。
- 開発・運用における“セキュリティ大使”的なロールを社内に先行配置し、境界横断の調整役とします。英国の制度導入に先回りすることで、外部との整合が取りやすくなります(推測)。
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調達・ビジネス(公共案件に関わる事業者)
- 英国公共向け案件のRFI/RFPで求められる可能性がある品目(SBOM、ビルド保証、署名・検証、脆弱性対応手順)のテンプレートを事前整備し、社内で責任部署を決めておきます。
- サプライヤーに対するセキュリティ要求(署名、SBOM、脆弱性開示対応)の更新条項を契約に組み込みます。段階的な適合ロードマップを示すと移行がスムーズです。
最後に、この計画の新規性と確度は十分に高い一方、現場での“効く”施策は地味な基盤整備に集約します。署名、証跡、可観測性――この三点を磨き込む組織が最終的に強くなります。
参考情報
- 英国の発表を報じる記事(計画の概要、予算、体制): UK unveils plan to boost cybersecurity and resilience of public online services | Help Net Security (2026-01-07)
- MITRE ATT&CK(代表テクニック)
- Supply Chain Compromise (T1195): https://attack.mitre.org/techniques/T1195/
- Subvert Trust Controls (T1553): https://attack.mitre.org/techniques/T1553/
- Trusted Relationship (T1199): https://attack.mitre.org/techniques/T1199/
- Network DoS (T1498): https://attack.mitre.org/techniques/T1498/
- Endpoint DoS (T1499): https://attack.mitre.org/techniques/T1499/
- Defacement (T1491): https://attack.mitre.org/techniques/T1491/
- Forge Web Credentials (T1606): https://attack.mitre.org/techniques/T1606/
- Steal Application Access Token (T1528): https://attack.mitre.org/techniques/T1528/
- Data Manipulation (T1565): https://attack.mitre.org/techniques/T1565/
- Exfiltration Over Web Service (T1567): https://attack.mitre.org/techniques/T1567/
背景情報
- i サイバー攻撃は公共サービスを数分で停止させる可能性があり、社会の信頼を損なう恐れがあります。このため、政府はサイバーセキュリティの強化を急務としています。
- i 新設される政府サイバーユニットは、サイバーリスク管理ポリシーの策定や、公共部門へのサイバーセキュリティサービスの提供を行い、全体的なセキュリティの向上を目指します。